本研究では,カルシウムイオンのアクセプターとして,カルモジュリン由来のカルシウムイオン依存性ヘテロダイマー形成モチーフであるHLH-III およびHLH-IV を用い,プロテインスプライシング反応をカルシウムイオン刺激によって制御する方法の開発を目指した。まず、この部分に対応するペプチドの合成を行い、HLH-III ならびにHLH-IV のヘテロダイマー形成を確認した。カルシウムイオン存在下ではHLH-III はHLH-IV ヘテロダイマーを形成することを、ゲルろ過、8-anilinonaphthalene-1-sulfonic acid (ANS) などの蛍光変化などを指標に確認した。ついで、HLH-IIIとEGFP、ならびにDsRedとHLH-IVの融合タンパク質を調製し、カルシウム存在下で、EGFPとDsRedの間でFRETが観察されるかを検討したが、明確なFRETは観察されず、これらの融合タンパク質がカルシウム存在下に会合しているのかどうかに疑問が残った。カルモジュリン中のHLH-IIIとHLH-IVとの立体配置から、これらが逆平行型のヘテロダイマーを形成すると予想し、上記の融合タンパク質を調製したが、ペプチド自体の認識に問題があるのか、融合タンパク質の設計に問題があるのかに関して今後詳細に検討する必要があると考えられる。一方、カルシウムイオンを用いてタンパク質機能をスイッチする例として、カルモジュリンC端ペプチドを膜外配列とする人工イオンチャネル(カルモジュリンC端ペプチドとチャネル形成ペプチド、アラメチシンのハイブリッド体)を合成したところ、カルシウムの存在下、カルモジュリンC端ペプチドの構造変化に呼応して、チャネルが開口する人工カルシウム感受性チャネルの調製に成功した。
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