研究課題/領域番号 |
23651222
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中村 隆範 香川大学, 医学部, 教授 (70183887)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 血清 / 細胞接着 / 細胞増殖 / 増殖制御因子 / FBS / 培地 |
研究概要 |
(1)C4bp、H因子及びLDLの血球細胞接着と増殖・アポトーシスへの効果について: 血清タンパク質であるC4bpやH因子及びLDLの接着阻害活性を定量的に測定するために、市販の補体系H因子、LDL/VLDLについて、各種血球系細胞:T細胞(Jurkat,Molt-4);B細胞(U937);単球・マクロファージ(THP-1);赤芽球(K562)を使って、無血清下における細胞接着数を比較し接着阻害にH因子やLDLが実際に機能することを確認できた。さらに、FBSに含まれる接着阻害因子としてはLDLが最も重要であると考えられたが、LDLは血球細胞の中でJurkatの増殖に必須であるものの、精製LDLは自然酸化のためか高い濃度では浮遊血球系細胞全般にに強い毒性を示すこともわかった。(2)ブタ血清中の細胞増殖抑制因子の精製について: ブタ血清では強い細胞増殖抑制活性が見出されたため、Jurkat、Molt-4細胞の増殖を指標に、ブタ血清を硫安分画した後、ゲル濾過、各種クロマトグラフィーなどで細胞増殖抑制因子の精製を行い、候補としてIgMとLDLを見出した。FBS中にはほとんどIgMは見出せないことや、LDLも少ないことから、これらが細胞増殖抑制因子として機能し得るかどうかさらに検討中である。(3)FBS、ブタ及びヒト血清中細胞増殖因子群の精製について: FBSやブタ及びヒト血清の硫安画分から血球細胞の増殖に必須の細胞増殖因子群の精製を行っているが、増殖因子の多くが血清中の血清アルブミンとクロマトの挙動を共にしていることが考えられた。我々は既にLDLとインスリン、トランスフェリン、亜セレン酸(ITSと略す)を必須の増殖因子群として同定している。これに加わる新たな主要増殖因子の探索を引き続き進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)培養プレートに非特異的に血球系の細胞が接着することを、血清中の補体系H因子及びリポ蛋白LDLが抑制していることが確認できた点や、ブタ血清中の細胞増殖抑制因子の候補としてIgMとLDLが見出された点は評価できるものの、FBS、ブタ及びヒト血清中細胞増殖因子群の精製がほとんど進まなかったことから、全体的に研究は当初の計画よりやや遅れていると思われる。(2)LDLがJurkatの増殖にとっては必須因子であるものの、血球系細胞全般にとって、酸化LDLが毒性を発揮することも分かり、LDLを増殖因子の一つとして利用する困難性も浮かび上がってきた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は遅れている増殖因子の精製を急ぐと共に、当初より計画していた以下の実験を実施する。(1)FBSやヒト血清中の増殖抑制因子(今のところ候補はIgMとLDL)を分析する。さらに、FBSのロット毎の増殖抑制因子を測定/比較して、細胞増殖活性(力価)と増殖抑制因子の相関関係を明らかにする。一方、ヒト血清がFBS以上に血球系の細胞培養に適していることを見出しているので、iPS細胞の増殖・分化による再生医療などに患者自身の自家血が有効に利用できるかどうか、自家血の有効性を検証する基礎実験を行う。(2)FBSを代替する低タンパク細胞培養用カクテルの構築現在、FBSやブタ血清から増殖因子の粗精製濃縮サンプルは得られているので、平成24年度中にFBS、ブタ血清からITS以外の主たる増殖因子を同定して、この増殖因子とITSを組み合わせたタンパクカクテルを試作して、各種血球細胞についてその増殖力価をFBSと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に物品費、人件費・謝金に充当する。特に23年度は人件費・謝金が研究推進に有効であったため、人件費を昨年度並みに支出する。
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