研究概要 |
今年度、FBSをはじめとする各種動物血清中の血球細胞接着・増殖阻害因子の同定や増殖力価の評価を行い、以下のような結果を得た。 1. T細胞株 (Jurkat,Molt-4)の増殖を指標に、各種ほ乳動物血清の増殖力価を比較したところ、Jurkatでは、ヒト血清、ブタ血清に低濃度領域でFBS以上の高い増殖活性が認められたが、ウシ血清、ウマ血清、ヒツジ血清には弱い増殖活性しか見出せなかった。一方、Molt-4では、何れの血清でも比較的良好な増殖活性が見出された。 2. ブタ、ウシ血清中の血球細胞増殖阻害因子の同定を進め、その一つがIgMであり、LDLを加熱(血清の非働化条件56℃、30分)して生じる酸化LDLにも強い細胞毒性を見出した。一方、IgGには顕著な阻害活性は見いだせなかった。 3. 各種動物血清を硫安沈殿や各種クロマトグラフィーで分画したところ、高い増殖活性をアルブミン画分に見い出せたが、最終的にアルブミンと増殖因子との分離には至らなかった。 4. JurkatはLDL要求性が強いが、Molt-4はLDL要求性が低く、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸(ITS)のみでも増殖することが分かった。また、Jurkatの完全な増殖には増殖因子や脂質以外の低分子成分が必要なことも分かった。Jurkatの増殖を指標に、IgMを除去してLDL量をコントロールできればFBSに匹敵する代替培地の開発が可能となることが考えられた。一方、血清中のアルブミンと増殖因子群の分離が無血清培地開発への最大の課題であることも分かった。
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