研究課題/領域番号 |
23651223
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 和則 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283389)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 合成ウイルス / DNA / ペプチド / 自己集合 / 複製 |
研究概要 |
これまで、生体内で自己複製するウイルスを人工合成した例がいくつか知られているが、これらはいずれも、短いDNAを多数繋ぎ合わせて数千塩基長のゲノム核酸とし、それを大腸菌に導入するという煩雑な操作が必要であった。本研究では、完全化学合成による比較的短いDNAとペプチドナノカプセル(合成ウイルスキャプシド)からなる、in vivoで自己複製しうる「最小限の人工ウイルス(minimal artificial virus)」を構築するための方法論を開拓することを目的としている。本年度は、トマトブッシ―スタントウイルスの正12面体骨格を形成するβ-Annulus配列(INHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGS)のN末端側にDNA結合部位としてArg4量体を導入したArg4-β-Annulus(RRRRGINHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGS)を合成し、M13 phage DNAとの複合化による最小ウイルスの構築を検討した。合成はFmoc固相合成により行い、逆相HPLCで精製、MALDI-TOF-MSで確認した。Arg4-β-AnnulusとM13 phage DNAを様々な電荷比および温度条件で複合化したところ、いずれも数百~数千nmの大きな凝集物を与え、ウイルスサイズのものは得られなかった。一方、未修飾のβ-Annulusペプチド(INHVGGTGGAIMAPVAVT RQLVGS)とM13 phage DNAとの電荷比1:1での複合化では、約80nmの球状構造体を形成した。これはDNA非存在下でのβ-Annulusペプチドの球状構造体(50nm)よりも大きい。この80nmの複合体のDNA部分をシスプラチン染色、全体を酢酸ウラニル染色してTEM観察することにより、DNAがペプチドナノカプセル内部に内包されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にあるArg修飾β-AnnulusペプチドによるDNA内包ナノカプセルの構築は成功しなかったが、意外にも未修飾β-Annulusペプチドによって、ナノカプセル内にM13 phage DNAを内包することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、自己複製する最小ウイルス構築のために、DNAからウイルス形成ペプチドの合成や選択的内包システムの確立に向けて研究を進める。具体的には、最小合成ウイルスのPCRによる増幅や、最小合成ウイルスのin vitro 複製、分子設計の改良について進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
最小合成ウイルスに内包されているDNAを増幅するために、プロモーター配列の相補鎖(TATAGTGAGTCGTATTAATTC)をプライマーとして、耐熱性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼなど)とdNTPsにより95℃、55℃、72℃の温度サイクルでPCR行い、最小合成ウイルス のDNAを増幅する。プライマーは、55℃で十分二重鎖形成しうる配列である。DNAの増幅はアガロースゲル電気泳動やSybr Greenを用いた定量PCRにより確認する。
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