研究課題/領域番号 |
23651223
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松浦 和則 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60283389)
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キーワード | 合成ウイルス / DNA / ペプチド / 自己集合 / 複製 / 無細胞発現系 / PCR |
研究概要 |
これまで、生体内で自己複製するウイルスを人工合成した例がいくつか知られているが、これらはいずれも、短いDNAを多数繋ぎ合わせて数千塩基長のゲノム核酸とし、それを大腸菌に導入するという煩雑な操作が必要であった。本研究では、完全化学合成による比較的短いDNAとペプチドナノカプセル(合成ウイルスキャプシド)からなる、in vivoで自己複製しうる「最小限の人工ウイルス(minimal artificial virus)」を構築するための方法論を開拓することを目的としている。本年度は、minimal artificial virusを形成することが期待されるトマトブッシ―スタントウイルス由来β-Annulus配列をコードするDNAを設計し、PCRによる増幅およびPURE SYSTEMによる無細胞発現を検討した。T7RNAポリポリメラーゼのプロモーター配列、SD配列、開始コドン、各アミノ酸に対応するコドン、終止コドンおよびPCR用のプライマー配列を含む120baseのDNAを設計・合成した。これをPCR操作後、ゲル電気泳動にて増幅が確認された。これを用いて、PURE SYSTEMによる無細胞発現を数回試みたが、目的ペプチドの発現は確認されなかった。DNA自体の構造形成などが原因として考えられるが、今後の検討が必要である。 また、DNAを表面修飾した合成ウイルスキャプシドの構築も検討した。5'末端アミノ化したdA20とトマトブッシ―スタントウイルス由来β-AnnulusペプチドのCys残基をSulfo-GMBSリンカーを用いて架橋し、HPLCにて精製した。興味深いことに、このdA20-β-Annulusペプチドコンジュゲートは、DNAの静電反発にも関わらず、水中で約70nmの球状構造体を形成することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-Annulusペプチドからなるナノカプセル内にM13 phage DNAを内包することには成功している。しかし、β-AnnulusペプチドをコードするDNAからの無細胞発現系によるminimal artificial virus構築には至っていない。一方、DNAを表面修飾した合成ウイルスキャプシドの構築にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、自己複製する最小ウイルス構築のために、DNAからウイルス形成ペプチドの合成を行うための無細胞発現法の改良を行う。また、DNA内包した合成ウイルスキャプシドについて、DNA長や形状の違いによる内包挙動について、詳しく検討する。また、DNAを表面修飾した合成ウイルスキャプシドを用いて、自己複製する最小ウイルスの構築についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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