将来開発する新規デバイスを用いた未培養微生物の効率的培養化を実現するには、難培養微生物の細胞濃度をデバイス供試前にあらかじめ高めることが望まれるため、本研究ではその要素技術の開発を試みた。 1、環境試料の選定 湖沼底泥や沼水、水田イネを選定した。分離培養や16S rRNA遺伝子ライブラリー法の結果から、イネ根内に共生する微生物の多くが未知微生物群と示唆されることを確認した。 2、易培養微生物の標識技術の開発 環境中の微生物群の一握りに可培養菌が限られる原因の1つとして、ある特定の増殖の早い菌が人工培地上に優占化されやすいことが挙げられる。そこで、DVC法の原理と蛍光色素CFDA-AMによる細胞染色を組み合わせることで、任意の人工培養環境で増殖の早い易培微生物と増殖の遅い難培養微生物の区別を試みた。大腸菌で基礎検討を行った後に、環境試料中の微生物群を対象に本手法を適用したところ、サイズ1-3μmのサイズで分裂していた細胞が本手法の適用後に5μm以上の蛍光の伸長細胞として観察された。これら伸長細胞は、難培養微生物の分離を困難とする一因である易培養微生物と考えられ、本手法の適用により12時間程度でその特徴化に成功した。 3、難培養微生物の標識、濃縮技術の開発 各環境試料の微生物群を対象に、DVC法、超音波処理、フィルター分画、CFDA-AM染色を順に行うことで、0.8μmのフィルターサイズを通過する蛍光の非伸長細胞が集積された。これら非伸長細胞は、生物活性を持つものの任意の人工培養環境では培養できない、もしくは生育速度が遅い難培養微生物であり、本手法の適用により1日以内の操作でその標識、濃縮に成功したと考えられる。今後、蛍光標識した難培養微生物の細胞群をセルソーターで1細胞ずつ培養デバイス上へ分取し、効率的に分離培養する方法の確立を目指す。
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