研究課題/領域番号 |
23651234
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
貞許 礼子 お茶の水女子大学, 糖鎖科学教育研究センター, 研究協力員 (50372264)
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キーワード | O抗原 / バクテリア / 大腸菌 / アジド / グラム陰性菌 / リポ多糖 |
研究概要 |
ヒトなど脊椎動物の腸には、常在菌といわれる細菌が種類も数も多く存在し、これは腸内フローラと呼ばれている。腸内フローラは、宿主の免疫や健康状態に重要な役割を果たしていることが近年明らかにされてきたが、腸内フローラの細菌の同定は、培養可能な細菌に限られたり、あるいは、遺伝子断片からの推定しかできないのが現状である。また、病原性大腸菌など外部からの細菌が繁殖して腸内フローラの分布を乱しさまざまな症状を呈する感染症を引き起こすことがあるが、この場合の原因細菌の特定にあたっても培養や遺伝子断片の増幅など時間がかかることが多い。このようなことから、多くの細菌の中から特定の細菌をラベル化する技術の開発が望まれている。本研究では、プローブ分子を腸内細菌に取り込ませることによって腸内細菌の可視化を行う新しい手法に挑戦している。大腸菌をはじめとするグラム陰性菌の表層には、ペプチドグリカン(バクテリア細胞壁)の外側に外膜がある。この外膜は、主にリポ多糖と呼ばれる糖脂質から形成されており、グラム陰性菌でほぼ共通構造のコア領域(KDOという特徴的な糖が含まれる)と、菌株によって異なることが多いO抗原糖鎖部位からなる。今回、このO抗原糖鎖の違いを利用して、株選択的にラベリングすることに成功した。さらに、ラベル化された部位はリポ多糖部位であることが確認できた。生きたバクテリアをその場で選択的にラベル化する手法はこれまでに実現されておらず、その学術的意義は大きい。また、今回扱った大腸菌O157は、重篤な腸管感染症をひきおこすことがある菌株として知られており、迅速にその場でラベルできることになると、診断や予防・感染源の特定や感染拡大の抑止へ役立つと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ライブイメージングまで進める予定であったが、ラベル化部位の特定などを慎重に行っていたため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
論文発表、学会発表を行うとともに、ライブイメージングへの展開を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、研究とりまとめのためのディスカッション、成果発表にかかる旅費、および、投稿論文のための英文校閲費を予定している。
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