研究課題/領域番号 |
23651241
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧野 泰士 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70332955)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | グリコーゲンホスホリラーゼ / グリコーゲン分解 / 阻害剤 / 糖尿病 |
研究概要 |
グリコーゲンホスホリラーゼには肝臓型・筋肉型・脳型という3種類のアイソザイム(アミノ酸配列が部分的に異なる酵素)が存在する。先ず、グリコーゲンホスホリラーゼの構造に関するこれまでの報告を調査し、肝臓型の構造が筋肉型や脳型の構造とは異なっている部位を確認した。そして、その情報を基に、阻害能を評価する化合物としてインドール誘導体の調製から始めることにした。これまでに12種類のインドール誘導体を調製することができた。また、グリコーゲンホスホリラーゼの高感度活性測定を行う際の基質となるピリジルアミノ化マルトヘキサオースの大量調製を行った。そして、この基質を用いて一次評価(予備試験)を行う際の反応条件の検討を行った。なお、この蛍光性基質を用いる高感度活性測定法は、グリコーゲン合成方向において活性を調べるものである [Makino, Y., & Omichi, K. (2009) J. Biochem. 146, 71-76]。グリコーゲンホスホリラーゼは可逆酵素であるが、生体内においてはもっぱらグリコーゲン分解方向に働いていることから、阻害剤の探索にはグリコーゲン分解方向で評価する方が望ましいと言える。そこで、グリコーゲン分解方向での簡便な活性測定法の開発にも取り組んだ。その結果、イオン交換クロマトグラフィーと電気伝導度検出器を利用する新たな活性測定法を開発することができた。ただし、蛍光性基質を用いる活性測定法と比較すると、感度の面では劣ることになった。また、精製度の低い酵素(粗酵素)の利用は難しいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で研究費が減額される可能性があったため、薬品等の購入を見合わせた時期があった。このため、グリコーゲンホスホリラーゼ活性測定用の蛍光性基質の調製については計画通り達成したものの、阻害剤の調製についてはやや遅れてしまうこととなった。なお、研究費が確定してからの研究は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
グリコーゲンホスホリラーゼ活性阻害能を評価すべき化合物の調製を、引き続き実施する。そして、それらの化合物が示す阻害能の一次評価(予備試験)を行う。一次評価において肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼへの選択的阻害作用が示唆される化合物が見つかれば、グリコーゲンホスホリラーゼの3種類のアイソザイムの精製を開始する。そして、得られた酵素試料を用いて、阻害能の二次評価(本試験)を実施する。二次評価はグリコーゲン分解方向で行うこととしたい。肝臓型グリコーゲンホスホリラーゼに対して高い選択性を持った阻害剤を選び出すことができた場合、基質濃度と反応速度との関係を調べ、阻害形式を明らかにする。また、選び出した阻害剤が酵素タンパクのどの部位に作用するのかを明らかにするため、酵素-阻害剤複合体の立体構造解析を試みる。そして、反応速度論的解析や立体構造解析などから得られた情報を基に、どのようなメカニズムで阻害が起こるのかを検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災の影響で研究費が減額される可能性があったため、当初は研究費の執行に対して慎重にならざるを得なかった。最終的に研究費の減額は回避されることになったが、当初の計画よりも研究の進展がやや遅れ、繰越金が生じることとなった。また、機器の大きな故障が起こらなかったことも繰越金が生じた一因である。阻害剤の候補となる化合物の調製がやや遅れていることから、繰越金をこの点の改善のために使用したいと考えている。また、平成24年度分の研究費は、阻害能の一次試験(予備試験)に必要な薬品等の購入に主として使用する計画である。
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