研究課題/領域番号 |
23651248
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高田 達之 立命館大学, 薬学部, 教授 (90206756)
|
キーワード | 固有種 / 生殖細胞 |
研究概要 |
1.繁殖期、非繁殖期における琵琶湖固有種ホンモロコの精巣由来、及び卵巣由来細胞株の樹立と精原細胞の増殖条件の検討 昨年度、樹立した条件を用いて繁殖期から非繁殖期にかけて様々な時期でのホンモロコの精巣由来細胞株(セルトリ細胞)、及び卵巣由来細胞株の樹立を試み、各時期においてそれぞれの細胞株樹立に成功した。遺伝子発現解析、および精巣切片での抗体染色の結果、精巣由来細胞はセルトリ細胞(Sox9a)、また卵巣由来細胞は、夾膜細胞(WT1a)由来と推定された。それら細胞株は樹立時期により、形態が類似したもの、異なるもの等様々であった。また遺伝子発現を比較すると、セルトリ細胞株ではCyp19a, Foxl2, Dmrt1を発現している株としていない株が認められた。さらにこれらの細胞株がエストロジェン、アンドロジェン、プロジェステロン、グルココルチコイド受容体を発現しており、環境水中のホルモン様物質が固有種ホンモロコのセルトリ細胞、夾膜細胞に与える影響を直接検出可能なテーラーメードバイオセンサーとして利用可能であることを見出した。 樹立したセルトリ細胞株をフィーダーとして、精巣細胞の培養条件を検討し、セルトリ細胞の上に接着してコロニーを形成するvasa陽性の精原細胞を約1ヶ月維持することができた。しかしその数は徐々に減少し、さらなる検討が必要であることが示された。 2.ホンモロコにおける精子のin vitro分化系の確立 一方で非繁殖期の精巣からin vitroによる、精子分化実験を行い、尾と運動能を有した精子を分化させることに成功した。BrdUの取り込み実感により、これらの精子が精原細胞から分化したものであることがわかった。またFACS解析により、1倍体の核相を有することが示された。すなわち琵琶湖固有種ホンモロコにおいて、精子のin vitro分化系が確立できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
繁殖期から非繁殖期に至る様々な時期において、ホンモロコ精巣由来、卵巣由来の細胞の細胞株の樹立に成功した。樹立した細胞株は遺伝子発現解析の結果、それぞれセルトリ細胞株、夾膜細胞由来であると考えられた。またこれらの細胞株がエストロジェン、アンドロジェン、プロジェステロン、グルココルチコイド受容体を発現していることを見出し、環境水中のホルモンを検出するバイオセンサーとして利用可能性を示した。 さらにホンモロコにおいて、約1ヶ月間、精原細胞の維持培養が可能な条件を見出すと共に、ホンモロコ精子のin vitro分化系を確立した。 iPS細胞樹立に向けて使用細胞の種類、ヒト由来Oct4,Sox2, Klf4,c-Myc遺伝子の導入条件、その後の細胞培養条件検討を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
1.精原細胞培養、バイオセンサー、in vitro精子受精能 今回樹立した繁殖期、非繁殖期由来セルトリ細胞株をフィーダー細胞として用い、精原細胞の維持培養、さらに増殖条件を検討し、生殖細胞株の樹立を試みる。同時に、in vitro分化系により作製した精子の受性能を確認し、機能的な精子がin vitroで作製可能であることを示す。また、今回樹立したセルトリ細胞株を用いて環境水中のホルモンがホンモロコのセルトリ細胞に与える影響を直接検出するテーラーメードバイオセンサーの作製を行う。 2.ホンモロコiPS細胞の樹立 本研究の目的すなわち保有種の保存という観点から、iPS細胞樹立においてゲノムに組込まれるレトロウイルスベクターの使用は適切ではない。そこでゲノムへの組込みが起こらないエピソーマルベクターを使用する。またiPS細胞樹立においてOct4,Sox2, Klf4,c-Mycの遺伝子は必ずしもその種由来である必要がないことがわかっている。そこでヒト由来の4遺伝子Oct4,Sox2,Klf4,c-Mycを使用して、エピソーマルベクターのエレクトロポレーションによるiPS細胞の樹立実験を行う。固有魚類ホンモロコの細胞を使用するが同時に魚類モデルとして、ゼブラフィッシュ細胞を用いたiPS細胞の樹立実験も試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に細胞培養に必要な培養液、血清、増殖因子、プラスチック製品、およびプラスミド精製、遺伝子導入に必要な試薬、キットの購入に使用する予定である。 12年度の経費執行は、ほぼ計画通りであったが、より経済的に物品購入を行った結果、端数が生じた。現在は残額も既に購入済みである。
|