研究課題/領域番号 |
23651253
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
田中 樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (10231408)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ベトナム / 在来生業 / 社会的弱者層 / 生業多様化 / 地域開発支援 / 生業と生態系保全の両立 / 遺伝資源の保全 / 貧困削減 |
研究概要 |
本研究は、対象地域の在来資源や在来技術の活用による生業多様化を通じて、生計の向上を図り同時に生態環境の保全をねらうものである。特に、貧困地域であるベトナム中部をフィールドに、社会的弱者層(山岳少数民族、小規模農民、経済的貧困者など)により実施可能な技術論や生業の創成を意識する。平成23年度の取り組みとその成果は、以下のとおりである。1)関連基礎情報の収集、調査対象地域および実証試験地の設定:ベトナム中部トゥアティエンフエ省のホンチャ県とアルーイ県を主な対象地域とし、地域住民の参加を得て、幾つかの実証試験サイトを設営した。連携機関であるフエ農林大学から所蔵する電子地図や衛星画像、統計資料などの提供を受けた。2)ミニブタ在来種に関するフィールド調査:調査対象地域では、在来種がほぼ消滅し、ラオス国境を越えて運ばれるミニブタを飼養するケースがほとんどであることが分かった。口蹄疫汚染国であるラオスからの在来種の移入やその研究は、法令に抵触する恐れがあるので断念した。一方、国内のカンナム省やクアンガイ省にはミニブタ在来種が残っており、後述する飼養トライアルではこれらの地域からのミニブタを使うこととした。3)研究成果の社会実装:生業多様化支援に関する学術成果(在来ミニブタの飼養、ホロホロ鳥の飼養、アカシア林での養蜂、山間部での温帯作物栽培、森林に自生する野草の栽培化など)を研究代表者らがフエ農林大学とともに提案し採択されたJICA草の根パートナー型技術協力事業「ベトナム中部・自然災害常襲地のコミュニティと災害弱者層への総合的支援(平成22年10月~平成25年9月)」に取り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究機関であるフエ農林大学の協力により、対象地域と実証試験を行なう村落の設定や実施体制、安全対策が十分に整った。口蹄疫汚染国であるラオスに隣接する地域であるため、ミニブタ在来種の分布に関するフィールド調査や遺伝資源保全のための飼養トライアルを今一度見直す必要に迫られている。一方で、国内他省に現存する在来種を用いたミニブタ飼養、ホロホロ鳥飼養、養蜂など放牧性小家畜を組み込んだ複合的生業モデルの形成に関する実証試験は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
生業多様化支援に関する学術成果(在来ミニブタの飼養、ホロホロ鳥の飼養、アカシア林での養蜂、山間部での温帯作物栽培、森林に自生する野草の栽培化など)をJICA草の根パートナー型技術協力事業「ベトナム中部・自然災害常襲地のコミュニティと災害弱者層への総合的支援(平成22年10月~平成25年9月)」に適宜取り込むようにする。並行して、これらの応用実践の事例を用いて、地域住民が新たな取り組みを受容し継承するための要件を探る研究へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に引き続き、研究費の大部分を調査対象地域でのフィールド調査のための渡航費に充てる。日本国内にある類似の取り組みを視察するための国内旅費を加える。対象村落(ベトナム中部アフーイ県フォンラム社、ホンチャ県ホンティエン社)にある協力世帯敷地内に実証試験区や展示圃場を設置するための、資材費を研究費より計上する。
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