本研究は、対象地域の在来資源や在来技術の活用による生業多様化を通じて、生計の向上を図り同時に生態環境の保全をねらうものである。特に、貧困地域であるベトナム中部をフィールドに、社会的弱者層(山岳少数民族、小規模農民、経済的貧困者など)により実施可能な技術論や生業の創成を目指す。最終年となる平成25年度の取り組みとその成果は、以下のとおりである。 1)在来ミニブタ飼養モデル:ホンチャ県ホンティエン・コミューンの協力農家とともに、在来ミニブタの生産圃場の運営を始めた(常時20頭前後の頭数を維持しつつ、剰余分を頒布)。現地で入手可能な飼料と囲い込み放牧形態の飼養法の効果を確認しつつ、運営資金確保のための生産・販売と遺伝資源の保全の両立を果たしている。近隣農村および買い取り業者の関心が高い。 2)ホロホロ鳥飼養モデル:ホンチャ県ホンティエン・コミューンの協力農家とアルーイ県ホンラム・コミューンのフエ農林大学山間部演習施設内で、現地の飼料とネット囲いを用いたホロホロ鳥の飼養を行なった。アフリカ原産の家禽で放し飼いを基本とするが、居住地や農地(菜園)が密に分布している状況や小規模農民の屋敷地では、このような集約的な飼養方が適している。鶏の致死率の高い疾病にり患せず、現地飼料を食し、食肉は比較的高値で取引される。有精卵の有償頒布による普及が始まった。 3)小規模養蜂:広大なアカシア造林地が広がり、農薬散布をする果樹園がないベトナム中部は、養蜂の潜在的適地である。フエ市への販路形成とともに、小規模養蜂の技術適用と担い手育成を進めた。 4)萌芽的な在地生業の創成:山野草(クレソン、シダ類など)の栽培化、草木染め、野生蜜蜂の粗放的養蜂、内水面養殖の改良可能性の検討を進めた。 5)フエ大学名誉教授号:本研究のみの成果ではないが、平成25年4月にフエ大学名誉教授号を受けた。
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