研究課題/領域番号 |
23651257
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90336701)
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研究分担者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / インドネシア / フィリピン / 生活権 / 在地商業権 / 生態資源の利活用 / エコ・ツーリズム / 慣習的海面利用 |
研究概要 |
環境主義の時代とも称される今日、鯨類やマグロ類といった水産資源の管理をめぐる問題をはじめ、海洋環境の保護が高度な国際政治課題となっている。本研究の目的は、もともと野生生物の利用に依存してきた人びとが、そうした地域資源(コモンズ)を商い、自立する権利、すなわち生活権を「在地商業権」(ICR: Indigenous Commercial Rights)」と呼び、日本と東南アジア地域における臨地研究を通じ、ICRの妥当性を検討するとともに、こうした野生生物の持続可能な利用を保障する制度設計をおこなうことにある。 平成23年度は、(1)映画『ザ・コーブ』で話題となった和歌山県太地町において、イルカ漁とイルカ肉の流通と消費に関するフィールドワーク、(2)南スラウェシ州のマカッサル市周辺海域ですすむ、サンゴ礁の保護とツーリズム開発に関するポリティクスについてのフィールドワークを実施した。 和歌山県においては、反イルカ漁を主張する集団による操業妨害についての聞き書きはもとより、右翼団体を自称する団体が反イルカ漁を主張する団体への暴力行為を辞さない姿勢についても耳にし、問題の深さを再認識するとともに、「当事者」の意志が欠如した状況下における問題の推移にあやうさを感じているところである。インドネシアにおいては、行政府によるエコ・ツーリズムへの期待の大きさから、過度な環境政策が施行され、結果的に「慣習」的な海面利用がむずかしくなってきているという実態があきらかとなった。同時に、経済開発による恩恵をうけた人びとのなかには、高等教育をうける余裕のある層も出現しており、大学を卒業後にそうした人びとが地域社会の開発にかかわれるような環境も創出されつつあることがあきらかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間的制約が大きいフィールドワークは、東北大震災の影響で当初予定していた夏期休暇中に実施できなかったものの、春期休暇中に実施することができ、おおむね順調に実施できたと自己評価している。夏期休暇中に長期のフィールドワークを実施できなかったものの、短期間でおこなえる日本を調査対象にくわえたことにより、東南アジアと日本とを同時代史的に比較する研究視点を得られたことは、ひとしくグローバル化社会を経験している島嶼社会研究=海域世界研究にとっても重要であり、本研究のひとつの視点として評価したい。こうした比較研究は、平成24年度も積極的に推進していきたい。また、外部の研究者をまじえた研究会も名古屋で2回実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
外部の研究者を招聘した研究会を3回計画していたが、3回目が話題提供者の都合で延期となったため、施設費として計上していた分(9,156円)の執行ができず、次年度に繰り越しとなった。このことをふまえ、今後は、研究会の日程と講師を年度初めに決定しておく所存である。そうすることにより、広報も行き届くものと考える。 フィールドワークについては、最終年度ということもあり、夏期休暇を有効に活用したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究会は、3回を予定している。同時に、フィールドワークは、日本の捕鯨地各地をはじめ、インドネシアのラマレラ島の伝統的マッコウクジラ漁、沖縄におけるサンゴ礁保護とツーリズムの関係、東インドネシアにおけるサンゴ礁保護とツーリズムの問題を実施する。
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