研究課題/領域番号 |
23651257
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (90336701)
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研究分担者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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キーワード | 国際研究者交流 / インドネシア / フィリピン / 生活権 / 在地商業権 / 生態資源の利活用 / エコ・ツーリズム / 慣習的海面利用 |
研究概要 |
代表者の赤嶺淳は、国際捕鯨委員会(IWC: International Whaling Commission)における先住民生存捕鯨(Aboriginal Subsistence Whaling)の議論を、「商業性」と「精神性」に着目してレビューするとともに、パナマシティで開催されたIWC64の参与観察をおこなった。そして、IWCで権利としてみとめられてきた生存捕鯨でさえも、鯨類の観光資源化に抗しがたい現状をICR(Indigenous Commercial Rights)との関係性で分析した。同時に、同会議では、日本の小型捕鯨協会も発言し、商業性と地域文化の関係性を強調したが、そのことについての他国の反応をヒアリングした。 昨年度にひきつづき、鯨食慣行を相対化するために東海地方を中心に、戦前期から高度経済成長期における鯨肉食についての記憶、のべ27名の個人史を採録した冊子にまとめ、それらの分析にもとづき、生活環境の変遷が食慣行に大きく寄与することから、ICRと併行して食の総体を俯瞰する「食生活誌学」という研究分野の確立の必要性を提唱した。 分担者の長津一史は、インドネシアのカンゲアン諸島に居住するサマ人のフィールドワークを通じ、ナマコやウミガメ、ハタ類などの輸出用海産資源の採捕を中心とした「伝統的」経済活動を分析し、カンゲアン諸島周辺の海域を、これらの商品海産物を採捕するための漁場や拠点が持続する「海域フロンティア」と特徴づけた。そして、サマ人はこうした海域フロンティア空間にニッチをみいだした異種混淆の海民集団であるとの理解にいたるとともに、「商業性」こそが、この海域における民族生成の過程を理解するうえで鍵となる概念であることを指摘し、ICRの妥当性を強調した。
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