研究課題/領域番号 |
23651258
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
米倉 雪子 昭和女子大学, 人間文化学部, 准教授 (60566389)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / カンボジア / 生計 / 健康 / 栄養 / 農業 / 貧困 / 保健医療 |
研究概要 |
平成23年夏と平成24年春の2回、連携研究者とカンボジアを訪れ、調査を実施した。現地訪問前に、研究代表者は農家の生計改善に向けた啓発活動として各自が農産物生産・消費量や農業投資・収益、家計収支を記録する生計記録シートを創案した。またベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー、南アフリカなどの貧困農家への生計・健康改善支援策実践者から情報収集を行なった。連携研究者は健康改善に向けた啓発活動と乳幼児の体重を毎月、測定することで対象農家が乳幼児の低栄養を柱に栄養と健康問題に気づき改善策をとることへの動機づけとなる啓発活動・研修の準備を行なった。平成23年8月23日~9月10日のカンボジア訪問では、研究協力者であるカンボジアNGOのCEDACと調査の打合せをし、カンポット県とプレイヴェン県から各2村ずつ計4村を対象村として選んだ。同地域の保健センターを訪れ、乳幼児の体重測定の状況などについて情報収集し、村の会議に招いた。村では農民協会に「農家の農業生産・栄養・健康改善による医療費削減と貧困削減」と本調査を行なう目的・背景・意義を説明した。(1)栄養失調⇒疾病⇒医療費負担⇒貧困⇒栄養失調...の悪循環を断ち切り、農業生産向上⇒栄養改善⇒健康改善⇒医療費削減⇒生計改善につなげる。(2)農家自身による農業生産・収支把握と管理の重要性。経費を抑える。(3)毎月の農業生産高・農産物の自家消費分・農業収支・食費・疾病と医療費・貯金・借金の記録を行なう有志を募り決定した。生計記録シートを配布し、記録方法を説明した。その後、半年、CEDAC調査補佐員が毎月、4村を訪問し、記録確認と方法改善を行なった。 平成24年2月17日~3月6日のカンボジア訪問では、同4村を訪れ、農民協会リーダーと過去半年の生計/月例収支記録と健康改善調査データを確認し、活動をふりかえり、今後の計画について協議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究日程は、初年度は、当初の計画の通り実施した。前半に調査実施計画を確定し、夏にカンボジア対象農家の農業生産について訪問調査、健康改善について対象者の意識化を含む参加型調査を行なった。 研究内容も、ほぼ当初の目標にそっているが、対象村の数を2県4村にしぼり、そこで手法を改善してから村の数を増やす方向に変えた。理由は、カンボジアでは内戦のため成人の非識字率が高く、体重測定と生計記録の両方で想定外の困難が生じたためである。ただしCEDAC調査補佐員が毎月、4村を訪れて指導をしたため、農家は積極的で、体重測定に訪れる乳幼児の数も30‐40名に増えた。また生計記録シートも過去半年でCEDAC調査補佐員が農家の有志と創意工夫・協議を重ね非常に使いやすくなってきている。農家自らが毎月、乳幼児の体重測定を記録してグラフに示し、農産物生産量や家計収支を記録していることはカンボジアでは非常に稀な事であり、今後、さらに改善し継続されるならば画期的な結果が得られると考えられる。 当初の計画は以下を予定していた。カンボジアの貧困農家に対する生計改善支援策は「農業生産改善と健康改善の支援策を統合した事業の方が、健康改善支援をせず農業生産改善の支援策のみを行なう事業に比べ、生計改善が見られる」という研究仮説を、実際に前者の支援策を受けた貧困農家と後者の支援策を受けた貧困農家の3年間の農業生産と家計と健康に関する指標の変化から検証する。指標は、農業生産は「農業資産と生産物・量」、家計は「収支」、健康改善は「乳幼児の体重、寄生虫感染状況」とする。比較のため、農業生産改善支援を受けた村をカンポット県とプレイヴェン県の2県から3村づつ計6村、農業生産と健康改善両方の支援を受けた村を2県から3村づつ計6村を選ぶ。しかし1年目は、前者のみ2県から2村づつ計4村で乳幼児の体重測定と生計記録のみを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
生計記録シートが、農家の生計改善の役に立ち、非識字の農家も記録しやすい使いやすい物となり、本調査終了後も自分たちで安価に作成・入手できる冊子となるようにする。乳幼児の体重測定によって食事・栄養・健康・医療費削減・貧困削減という関連について農家が気づき、認識することで生活改善の動機づけが強まり、生活改善の方法・知識を身につけられるようにする。平成24年度は訪問調査により、モニタリングと改善を継続する。さらにカンボジアNGOのCEDACによる「農業生産改善と健康改善の支援策を統合した事業」と「健康改善支援をせず農業生産改善の支援策のみを行なう事業」の効果の評価を試みるため、後者の村を2県から2村づつ計4村、選び、生計調査を実施したい。平成25年度の夏に最終的な訪問調査、データ分析、最終報告書を作成し、さらに平成26年度以降に対象村を増やす意義と計画を提言としてまとめる。最終的には、研究結果に基づき、貧困農家に対する「農業生産改善と健康改善の支援策を統合した生計改善支援策」について提言をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度(金額単位:千円)は前年度より繰り越し分221が加わり、直接費 計1121 間接費 計270となる。 この変更の主な理由は、1年目は生計記録方法を農家が役に立つと実感でき使いやすいものに改善してから、対象村を増やした方が良いと考えられたため、予定していた対象村12村から4村に減らしたためである。当初、比較のため、農業生産改善支援を受けた村をカンポット県とプレイヴェン県の2県から3村づつ計6村、農業生産と健康改善両方の支援を受けた村を2県から3村づつ計6村を選ぶ予定であった。しかし1年目は、2県から2村づつ計4村で乳幼児の体重測定と生計記録を実施するにとどめた。 研究を遂行する上での課題は、現地の調査補佐員チャンディー氏が平成24年5月からチェンダ氏に交代したため、活動に遅れが生じる可能性もある。そこで対象村を増やす時期なども状況にそって柔軟に対応する。そのため繰越金は調査費として計上する。*国内・外国旅費(計480):打合せ会議旅費、往復航空券他; 調査レンタカー他; 首都内交通費; 宿泊費*謝金など(計210):研究協力(4人x2回x15日x3);健康調査協力(4人x2回x15日x3);データ入力・分析補助 翻訳;調査協力/参加者(500人x0.1) *その他(計431):調査用紙印刷、健康教育教材、通信費(郵送、携帯電話)、書籍資料代、コピー代、会議室借用料村会場借用料、会議茶菓/昼食
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