前年度まで、世界銀行が日本に借款を供与して実施した機械開墾プロジェクトの経緯と長期的な事後評価を実施したが、これに加えて1950年代から1980年代にかけての根釧パイロットファームの経営状況について、さらに文献調査や3名の入植者にヒアリングを行うなどして、プロジェクト開始当時の営農設計における課題を明らかにした。 根釧パイロットファームは、設計時には耕地面積に30ヘクタール程度は必要であるという指摘がなされており,当初は25ヘクタールで計画されていた。しかし、入植前に機械開墾によって農場整備を完了させ、ただちに分譲するという従来にない「建売り農場」であったため、入植時の農家の経済的負担が250万円と重くなってしまった。このため、農林省は分譲規模を18.8ヘクタールに抑えざるを得なかったのだが、それでも借入金は入植者にとっては重い負担となり、半数以上の農家が離農せざるを得なくなった。しかし、その一方で、残留することができた農家は、離農した農家の土地を吸収して経営を続け、その後の日本の酪農経営のモデルケースとなった。 これまでの研究成果を発信するため、2013年12月11日にJICA市ヶ谷国際会議場(東京都)でセミナーを行い、世界銀行の農業案件が日本の農業開発に及ぼした影響とその教訓について情報発信した。
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