研究課題/領域番号 |
23651261
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研究機関 | 山梨英和大学 |
研究代表者 |
宅間 雅哉 山梨英和大学, 人間文化学部, 教授 (60259257)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 気候 / 地名 / 気候地名 / イングランド / イギリス / 英語 / 語源 / 学際 |
研究概要 |
Millsの地名辞典(2003)から収集した古英語hammに由来する地名100例は、その90%以上がイングランド中部南半部以南に分布し、特に南東部及び南西部に多い。そして当初の仮説通り、「囲い地」「河畔の低地草地」「突起地形」「河川の湾曲部」「島状・谷状地形」と多義的なhammは、いかなる意味で語源に関与するかによって、地名の分布に顕著な差をもたらすことが明らかになった。ただ、乾湿及び季節に関する気候地名との有意味な関連を見出すには至らず、現在、収集の対象を古英語hammまたはham(「家屋敷」「村落」)に由来する地名、及びhamに由来する地名に拡大して、この点を調査・検討中である。また副次的な成果として、地名の文献初出年と『アングロ・サクソン年代記』の記述に一定の相関が認められた。文献初出年は、今後、気候地名拡大の推移を把握する手段の一つとして活用する。 『イングランド各州地名要覧』による本格的な気候地名の収集では、イングランド南東部がほぼ完了した。現時点における傾向の概略としては、「日照・日射」に関する古語に由来する地名は比較的少なく、「夏」及び「冬」、さらに「寒い」を意味する古語に由来する地名が多い。またNorth Downs以北には「風車」と「乾いた」を意味する古語に由来する地名が頻出するが、それ以南では双方とも少ない。この問題については、今後、風と降水に関する気候データ及び地形、とりわけ起伏との関連を検討しつつ、両地名の相関関係を考察して行く。 平成24年2月22日から3月6日の日程で実施したイングランド南東部の巡検は、実際に現地を訪れ、地形図と照らし合わせながら周囲の地形を観察することで、地名の語源解釈に最終判断を下す機会となるとともに、新たな解釈の可能性を発想する契機ともなった。今後も踏査の時期と地域を変えながら、気候地名研究推進に活用して行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書作成時の研究実施計画では、平成23年度下半期(10月~平成24年3月)中に、イングランド南部を扱った『イングランド各州地名要覧』からの気候地名収集をほぼ完了する予定であった。しかし、南部のうち南西部が未着手の状態である。この遅れを生じた最大の理由は、以下の三点である。1 古英語hammに由来する地名と、乾湿及び季節に関する気候地名との関連をより詳細に検討するため、これらと同様に語末を-hamと綴るすべての地名、すなわち古英語hammまたはham(「家屋敷」「村落」)に由来する地名、及び古英語hamに由来する地名にまで研究対象を拡大したことに伴い、例の収集・整理・分析、白地図へのプロッティング等のデータ作成が、下半期にまでずれ込んだこと。2 当初、遅くとも9月中を見込んでいた『イングランド各州地名要覧』77冊の納品が11月初旬となり、これによる気候地名収集作業の開始自体が遅れたこと。3 『イングランド各州地名要覧』には、むしろ語源が明示されていない地名、及び現在の地形図には記載されていない地名が多いことが判明し、信頼性の高い語源解説と所在地把握のための方策を模索する時間を要したこと。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度上半期(4月~9月)は、まず、イングランド南西部を扱った『イングランド各州地名要覧』(以下、『各州地名要覧』)による気候地名の収集を行う。そしてほぼ作業が完了した南東部の例と合わせて、イングランド南部の気候地名をいくつかの気候要素、例えば「日照・日射」「寒暖」「乾湿」「季節」「風」ごとに分類し、研究成果のまとめに着手する。その際、『各州地名要覧』のみでは語源が判然としない例については、他の文献等の記述を引用して、その時点における最大限の可能性を提示し、所在地が判然としない例については、郡単位での概略的な分布図作成を、暫定的に検討している。そして8月には、約二週間のイギリス巡検を実施し、南東部・南西部東半部・中東部南半部を対象に、主として「乾いた」及び「夏」を意味する古語に由来する気候地名の現地踏査を行う予定である。 下半期(10月~平成25年3月)には、イングランド南部の気候地名に関する研究成果のまとめを完了し、『各州地名要覧』によって中部の気候地名収集作業を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の助成金(次年度使用額)については、英国の地形図(2万5000分の1、403枚)購入のため、平成24年度の研究費と合算して使用することとした。これと合わせて、平成24年度研究費は、上記「今後の推進方策」に示したイギリス巡検、及び関連書籍の購入に充てる予定である。
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