研究課題/領域番号 |
23651261
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研究機関 | 東京未来大学 |
研究代表者 |
宅間 雅哉 東京未来大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60259257)
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キーワード | 気候 / 地名 / 気候地名 / イングランド / イギリス / 英語 / 語源 / 学際 |
研究概要 |
イギリス地名協会による『イングランド各州地名要覧』(以下『要覧』)のうち、Surrey及びSussexの『要覧』から気候地名計106例を収集し、気候要素別にイングランド南東部における分布図を作成して論文にまとめた。収集にあたっては、『要覧』に示された語源情報、地名の古形、解説等を根拠として英語学(史的研究)的視点から吟味し、気候地名か否かの判断を行った。日照・日射に関する地名及び寒暖に関する地名が最も多く、各31例であった。続いて季節に関する地名24例、乾湿に関する地名13例、風に関する地名7例となった。今回の収集では、新たに「洪水」「虹」「露」「荒天」「風車」の意味が語源に反映された地名を確認した。分布図の比較では、日照・日射に関する地名と季節に関する地名に興味深い相関が認められた。なおこの論文では、今後の研究発展のために、気候地名の定義を再検討する必要性を論じた。また、平成24年2月22日から3月6日の日程で実施したイングランド南東部巡検の際の画像を複数掲載し、解説を付して説得力を強化した。 『要覧』による本格的な気候地名の収集は、イングランド南西部・中東部がほぼ完了し、現在、中西部の収集が進行中である。例の増加につれて、これまで予想できなかった発見が少なからずもたらされているが、特に日照・日射に関する地名については、「明るい」を意味する単語としてgold及びsilverが付いた地名さえこれに加わること、「暗い」を意味する地名は植生、すなわち森や林などとの関連でとらえるべきであることなどが明らかになりつつある。 平成24年8月22日から28日の間には、Berkshire及びWiltshireでの巡検を実施した。実際に現地を訪れ、地形図とともに地形や植生を観察することは、地名の語源解釈に最終判断を下す好機となり、新たな解釈の可能性を発想する契機ともなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書作成時の研究実施計画では、平成24年度上半期(4月~9月)に、イングランド南部(南東部及び南西部)の気候地名を気候要素に関する意味ごとに分類し、分布図を作成する予定であった。現状では、すでに同地域の気候地名収集作業は完了しているが、南西部の分布図を作成中の段階である。一方、平成24年度下半期(10月~平成25年3月)の予定は、イングランド中部(中東部及び中西部)の気候地名収集作業を進捗させることであったので、この点ではおおむね順調に進展しているといえる。分布図の作成に遅れを生じさせている主な要因は、以下の2点である。 1 収集の過程で、各州の気候地名は、一般的な地名よりもむしろ原野名(field-names)として出現することが圧倒的に多いことが明らかになった。ただこの原野名は、いずれの『要覧』においても、語源・古形に関する情報及び解説等が極端に少なく、所在する教区(parish)ごとに列挙される程度で、気候地名か否かの判断に予想以上の時間を要することが多い。 2 検討の結果、気候地名とみなして差し支えないと結論づけても、現代の地形図(英国政府陸地測量部による5万分の1及び2万5千分の1地形図)には出現しない地名が少なくない。このような地名の位置の特定は、時間をかけてウェブ上の各種検索エンジンを利用し、キーワードの組み合わせ等を工夫して目的を達成する以外に、現状では方法がない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度上半期(4月~9月)は、気候地名の収集が完了したイングランド南西部及び中東部について、気候要素別に分布図を作成し、論文として研究成果をまとめる。その際、平成24年8月のイングランド巡検の成果を画像とともに添える。中西部の気候地名収集も、これと並行して行う。 また、分布図の作成には、これまで著作権フリーの白地図をウェブ上からダウンロードして使用してきた。しかし、これには海岸線描画の精度に若干不十分な点が感じられるので、必要に応じて白地図を自作する。さらに、気候地名と判断した地名に関する包括的資料、すなわち当該地名が記載された『要覧』のページ数、語源及び古形等に関する情報、地名が意味する気候要素の分類等を一覧にしたデータを、これまで2度にわたるイングランド巡検の記録とともに、ウェブ上に公開することを検討中である。 そして8月には、10日から14日間の予定でイングランド巡検を実施する。対象は南西部あるいは中東部で、今回は現地踏査にとどまらず、地域の図書館や資料館でも情報を収集したい。 下半期(10月~平成26年3月)には、中西部からイングランド北部へ収集の対象を広げ、分布図の作成を急いで、できるだけ早期に研究成果をまとめて公表に漕ぎ着けたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費は、上記「今後の推進方策」に示したイングランド巡検、及び関連書籍の購入に充てる予定である。
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