本研究は、インドネシアの女性家事労働者に焦点を当て、農村の女性労働力市場と都市さらには海外への送り出しシステムとその問題点をおもに女性家事労働者へのインタビュー調査から考察することを目的とする。 研究初年度である平成23年度には、バンドン市の女性家事労働者派遣業者において平成20年度に実施した女性家事労働者調査の追跡調査をおこなった。女性家事労働者の海外出稼ぎがいっそうすすむ中で、国内向けに女性家事労働者を仲介する派遣業者がどう対応したのかについてインタビューによる聞き取りをおこなった。当該調査により、農村出身の若い女性が賃金の高い海外出稼ぎを好む傾向のある中で、既婚の子持ちあるいは介護が必要な親をもつ女性は国内で働くことを選択するという傾向を把握することができた。 平成24年度には、インドネシアの女性家事労働者の海外への送り出しシステムを調査するために香港においてインドネシア人女性家事労働者にインタビュー調査をおこなった。聞き取りから、海外出稼ぎ者のライフコースや香港での就業および生活実態が明らかになった。すなわち、出稼ぎ者は出身地での就業機会および就業から得られる賃金が少ないため出稼ぎに出ることが選択する。しかしながら、高校卒業の学歴を有していても都市における農村出身者の就業機会は著しく限定的であるため、海外出稼ぎに活路を見出している。調査から、海外出稼ぎの特色として各出稼ぎ者の出稼ぎ先は複数国にのぼり、渡航先の変遷から出稼ぎ者の出稼ぎに対する考え方を把握することができた。また、出稼ぎの派遣システムに内在する問題点も明らかとなった。そして、同年におこなったインドネシア国内での調査によって、国内の女性家事労働者の問題が海外出稼ぎに拍車をかけていることも明らかになった。これらのことからインドネシア女性家事労働者のインドネシア国内およびアジア地域内での就業構造を解明する。
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