研究概要 |
本科研費のテーマは、「脳・時間・責任」を鍵概念として「脳神経倫理学」の検討を行なうことであった。しかし、東日本大震災の影響で研究計画の一部変更を余儀なくされ、結果として、本科研費に関係する研究実績となるのは、以下の2点である。 (1)論理教育における「論理」とは? (2)Tsunami-tendenko as Education for disaster Prevention ── Information, Psychology, Memory, and Bond ──(防災教育としての「津波てんでんこ」を考える ── 情報・心理・記憶・つながり ── ) (1)では、近年富に研究が進捗しつつあるニューラルネットワークについて、そのモデル化を図るための手がかりを考察した。すなわち、脳の「思考」と「論理」との関係を言語の統語論の観点から再構成しながら、論理的思考を涵養するうえで標準的な第一階述語論理をどのように活用すべきかを探った。これは、現在、初等中等教育で試験的な取り組みが行なわれている「論理科」「ことば科」を今後さらに効果的に推進するための基礎理論をなす。 (2)では、津波防災という具体的なテーマに即しながら、責任概念と時間とがどのように関係するのかを論じた。開始当初は、本科研費とのつながりが見てとりにくかったが、情報・心理・責任と時間との連関の一端を取り出すことができた。とりわけ、「津波てんでんこ」という防災指針の観点から時間概念と責任概念を再検討できたことは貴重であった。次年度以降の研究にも有益な視点を提供すると考えられる。
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