研究課題/領域番号 |
23652002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高山 守 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20121460)
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研究分担者 |
榊原 哲也 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20205727)
杉田 孝夫 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (40206412)
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キーワード | 自由 / 家族 / ケア / 市民社会 / 現象学 / フィヒテ / ヘーゲル / 韓国 |
研究概要 |
「家族」の形態は、歴史的に変遷している。現在も例外ではない。しかし、核家族とよばれる夫婦二人とその子どもからなる近代の家族形態は、現在も依然重要な意味を持ち続けている。その意味を哲学的な観点から捉え返す試みが、本研究である。高山は、選択可能性に基づく「自由」という観点を設定する。私たちが自由であるとは、真の意味で選択可能性があるということであり、それゆえに、当の選択肢のいずれもが、自分自身の振る舞い方でありうるということである。したがって、一方の選択肢の選択による、ある振る舞いの遂行には、他方の選択肢(別の振る舞い)がつねに相伴っている。私たちの自由な振る舞いとは、こうした自他の相即性において成立する。家族のまずもっての単位である夫婦とは、この自他の相即性の実体化なのではあるまいか。こうした視座のもとで、自由の問題を徹底して論究し、「家族」の哲学的基盤を確保した。榊原は、とりわけ「ケア」という視点に基づき、昨年度、「自殺に傾く人」とその家族との関係についての現象学的考察を行なったのを踏まえて、精神病理を現象学的観点から「意味の病」として捉えるとともに、慢性疾患を抱えた患者を個として、しかも家族と地域で支えるケアという視点から捉え返した。これは、「家族」の基礎付けの現象学的試みでもある。杉田は、二十世紀の経験したデモクラシーのパラドクス――すなわち個人に対する普遍的な役割だけが強化されるならば、個人の自由の個別的かつ多様な現われが規制される――という観点から、家族を、個々人の個別的自由が生成する基体と位置づけ、その役割の重要性を解明した。その際の具体的な論議の一つは、東日本大震災被災地の現場における家族と自由の問題に目を向けつつ、家族と市民社会、国家、市場との関係についての考察である。
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