研究課題/領域番号 |
23652003
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
大澤 秀介 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50233094)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / 連合王国 |
研究概要 |
現在、T.L.ShortのPeirce's Theory of Signs等を参考にしながら、1900年以降のパース手稿の研究を続けているが、パースのfinal interpretant(目的解釈項)を含む記号理論は極めて断片的で、全体像を再構成することは非常に困難であることが判明しつつある。しかし、本研究の最も重要な論点である「シンボル記号」の創発現象の解明には、パースの擬似的な目的論、すなわち統計力学的な世界像を背景にしての記号理論の解明が絶対的な前提となるので、それを省略することはできない。 2年間という時間的制限もあるので、現在ある程度明確になっている部分を基礎として、シミュレーション的研究に移行する準備をしている。その第一歩として、人工社会モデルによる創発現象シミュレーションを行なう。そこで、まずはワークステーションを購入し、短時間で複雑なシミュレーションが可能な環境の整備を始めた。ソフトウェアとしては、artisoc 3.0を購入する予定である。 パースによれば、音声言語や文字言語といったシンボル記号は、単なる音声や紙の上のインクの染みといった物理的存在を超えて「シンボル記号」となるためには、社会における多数のエージェントによる(無意識の)承認を必要とする。この点で「シンボル記号」の存在性格は、貨幣と非常によく似ている。つまり、あるパターンを印刷した紙が、一万円という「貨幣」であるためには、一万円という価値の存在と、あるパターンを印刷した紙とそれとの関係そのものを、ある一定の社会のほぼ全員の構成員が無意識のうちに承認することが必要であるが、「シンボル記号」もそれが指し示す抽象的な存在と、それとの関係そのものが無意識の社会的な承認によって成り立っているのである。そこで本研究では、これを手がかりとして、貨幣創発現象の人工社会的シミュレーションを参考にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
C.S.パースの記号理論を、彼の偶然主義的な形而上学を背景にして情報統計力学的な観点から見直すことが一つの目的であるが、その「偶然主義的形而上学」の解明に非常に手間取っていることが、研究が遅れていることの主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
C.S.パースの偶然主義的形而上学の解明は、ある程度のところで切り上げなければならない。並行的に人工社会モデルによるシミュレーション的研究を開始して、「シンボル記号」の創発現象をモデリングによって研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人工社会シミュレーションのためのソフトウエアの購入国内研究者との交流国外研究者との交流
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