研究課題/領域番号 |
23652003
|
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
大澤 秀介 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50233094)
|
キーワード | 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
24年度は前年度の文献研究を継続した結果、1904年頃にパースによって書かれたと思われる草稿(いわゆる)KAINA STOICHEIAの重要性を発見した。この文献を中心にして、パースの記号論としての論理学の基礎について研究を行った。その結果、社会法則的な存在であるシンボル記号も、その現実的な表れにおいては、個別性や対象との類似性という、パースのカテゴリーでいえば下位の存在性格を持たねばならないという重大な事実の発見に至った。この事実はシンボル創発現象のモデル・シミュレーションにとって大きな障害となる可能性がある。 しかしながら、このような事態は一般的なモデル・シミュレーションの中で、特別に注意を受けないで取り入れられている可能性もあるので、本年度は、モデル・シミュレーション・ソフトであるartisoc 3.0を購入して、人工社会の構築に関する基礎研究も行った。しかしながら、上記のシンボル双発現象のシミュレーションにおける障害がどの程度現実の問題を引き起こすかに関してはまだ知見が得られていない。 また本年度は、以上のような本質的な問題を議論するために合衆国に出張して、パース研究者と会合し、一定の知見を得るとともに、マサチューセッツ州において、日本では得られない草稿類に関して文献的研究を行い、またパースが1900年以後生活の中心としたペンシルヴェニア州ミルフォードの周辺の実地調査を行った。これは、その後の研究で明らかになった、この時代のパースの生活状況を調査するためにぜひ必要になったものである。パースの伝記にも多少の言及があるが、パースは非常に貧窮していて、それを挽回するためにいくつかの事業計画をもっていた。この現地調査はそれを確認するためのものである。しかし9月に帰国後、病を得て入院し、以降24年度末までほとんど本研究に関する活動を休止せざるを得なかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
23年度の文献研究が進捗しなかった上に、本年度はやっと少し進展の方向を見出した時に、病を得て入院し、それ以後の研究を休止したことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
文献研究とシミュレーションによる研究を継続するとともに、近接分野の研究者と一緒に共同研究を開始し、パース記号論のロボティックスにおける正確な理解に貢献したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
体調不良により,研究計画に遅れが生じたため残額が生じたが,引き続き,国内研究者との研究交流に使用する。
|