研究課題/領域番号 |
23652005
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松阪 陽一 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (50244398)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 哲学 / 西洋哲学 / 言語哲学 / 意味論 / 語用論 |
研究概要 |
本年度の目標として、「Fregeによる「意義と意味について」、「思想」、Wittgensteinによる『青色本』、『哲学探究』における心理主義批判を再検討する。その際、アリストテレスの『命題論』や、ロック、バークリー、ヒュームにおける心像の扱いを再度見直し、FregeとWittgensteinによる批判が意味の心像説のどの部分を有効に批判し、どの部分に関してそうでないのかを明らかにする」を挙げたが、これに関してはある程度納得のいく調査が行えたと考えている。特に、アリストテレスの見解は研究代表者が考えていたよりも複雑で洗練されており、この点に関してはD. Modrak, "Aristotle's Theory of Language and Meaning"が参考になった。フレーゲやウィトゲンシュタインの心理主義批判がこうした見解とどう関係するのかについても、ある程度解明できたと考えている。 次に、「現代の認知科学、心理言語学、神経言語学の文献を精査し、発話理解と心像構築の関係について現在明らかになっている科学的知見を確認する」ことも本年度の目標に挙げたが、こちらに関してはその達成度はやや不満の残るものであつた。その原因として、(1) 震災の影響で交付予定額の満額交付の見通しが立たなかったせいで文献収集に遅れが生じたこと、(2) 実際の交付額が申請額よりも少なかった関係で、予定していた研究協力者に協力を求めての、組織的な文献調査が適わなかったこと、の2点が挙げられる。しかし、それでもBarsalouの見解を調査、整理することについては、ある程度達成できたものと信じる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも述べたとおり、意味に関する心理主義的学説の歴史的概観と、フレーゲとウィトゲンシュタインによる批判点の再確認については、順調に目的を達成したと考えている。 しかし、「現代の認知科学、心理言語学、神経言語学の文献を精査し、発話理解と心像構築の関係について現在明らかになっている科学的知見を確認する」に関して言うと、Barsalouの見解を調査、整理することについてはある程度満足の行く研究が行えたと考えるが、全体としてはやや遅れ気味になっていると考える。その理由としては、(1) 震災の影響で交付予定額の満額交付の見通しが立たなかったせいで文献収集に遅れが生じたこと、(2) 実際の交付額が申請額よりも少なかった関係で、予定していた研究協力者に協力を求めての、組織的な文献調査が適わなかったこと、の2点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としては、本年度に十分な成果が得られなかった、「(2)現代の認知科学、心理言語学、神経言語学の文献を精査し、発話理解と心像構築の関係について現在明らかになっている科学的知見を確認する」という課題に取り組みつつ、申請書に記載した研究目標、「(3) (1)と(2)の成果に基づき、FregeとWittgensteinによる批判の妥当な部分と矛盾しない形で、心像の構築が発話理解において果たす役割を明らかにする」、「(4) Grice並びに新グライス主義、関連性理論が提出する語用論的原理がもつ概念的基礎を批判的に吟味し、それらの原理を(3)の成果に基づいて再評価する」、「(5) 以上を踏まえ、新たな語用論原理を発見、提案する」、「(6) (5)の成果を踏まえ、新たな語用論原理が言語哲学の諸問題に対してもつ意義を考察する」という研究目標を達成したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究費を主に次の四つの目的に使用して研究を遂行する予定である。(1) 認知科学や心理言語学、神経言語学関係の書籍代並びに文献複写依頼の費用」、(2) 資料収集のための旅費、(3) 研究協力者や専門知識の提供者への謝金、(4) 研究協力者や専門知識の提供者との会合、並びに成果発表のための旅費。
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