研究課題/領域番号 |
23652010
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研究機関 | (財)東方研究会 |
研究代表者 |
釈 悟震 (財)東方研究会, その他部局等, 研究員 (80270536)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スリランカ仏教と他宗教の対話 / 宗教による平和思想 / アジア的寛容思想 / 宗教思想と絆 / 宗教対話における怨親平等 / スリランカ国際情報交流 / スリランカ国際研究者交流 / 異る宗教との共存思想 |
研究概要 |
スリランカは四半世紀に及ぶ政府とタミル系ヒンドゥー教徒との宗教対立の国のイメージがあるが、歴史的には仏教を中心に宗教討論を通じての宗教共存が積極的に行われてきた。その典型が、仏教とキリスト教の対論である「パーナドゥラ論争」である。しかし、この対話の文化は今日のスリランカでは積極的な評価が得られていない、とされる。 本研究はスリランカにおける異宗教間対話研究のパイオニア的存在との評もある本研究代表者釈悟震を中心に、連携研究者保坂俊司と共に、同国における異宗教間の共存思想およびその具体的な展開としての対話の歴史の発掘と、その現代的な意義を明らかにし、日本のみならず世界に向けて、スリランカにおいて醸成された諸宗教間対話の思想と、その21世紀的な意義を発信し、特に、スリランカの人々に彼らの文化の再評価を提言することをめざす。 平成23年度は、研究代表者の釈が研究全体を総括しつつ、「パーナドゥラ論争」に代表される仏教とキリスト教の宗教対話の全貌を明らかにするために、現地調査や資料収集をスリランカの名門ペラデニヤ大学やルフナ大学の協力を得て行う計画を実施し、連携研究者保坂は、スリランカ南部のイスラム密集地域のゴール地域のイスラムと比較的新しい改宗者が多い、仏教の聖地も近い中部丘陵地域のキャンディ周辺のムスリムの現地調査を行う予定であったが、渡航先のスリランカ国立ペラデニヤ大学並びにルフナ大学が学生運動などにより、大学が平常でない状況や、タミル民族との紛争が未だに完了されていない政治的不安要素もあり、現地調査ができなかった。しかし、平成24年度に実施すべく、諸般の実施計画に必要とする基礎的準備と共に、当該課題遂行のために、日本では初めて刊行される『上座仏教事典』に「スリランカにおける宗教対話の基礎的研究」に関わる多くの項目を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度中に日本では初めて刊行を目指す『上座仏教事典』において「スリランカにおける宗教対話の基礎的研究」に関わる多くの項目に対し集約的に専門的かつ挑戦的研究を一般に広げる執筆を行った。このように、宗教対話の基礎的意味を専門者だけではなく、社会全体的に広く発せられることは大きな評価を有すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年25年度について釈は平成23年度に現地調査が実施出来なかった分を踏まえてプロジェクトを総括すると同時に、スリランカで前世紀において激しく衝突した仏キ論争を始め、五大論争地の調査やコロンボ論争の調査研究を行い、埋もれている資料の発掘を行う。その際、前述の大学のスタッフの協力を求めて同国立大学や国立公文書館やマスコミ各社などが所蔵する資料の閲覧や調査、更に資料収集を行う。又その論争が起因となり世界的な仏教復興運動へと連なっていった思想的背景や運動の経緯を解明する。更に七万人を超える死者を出した内戦の終結と共に、多数派で仏教徒中心のシンハラ人と、少数派ヒンドゥー教徒中心のタミル人との間に深刻な亀裂が生まれている現在、同民族による宗教対立を超えた平和社会の構築という社会的・政治的重要課題に対して、その解決策を同国歴史の中から見出す為の基礎資料の提示として、本研究成果を同国民族に向けて発信するための努力を行う。その為のシンポジューム等を前述の大学スタッフの協力を得て開催する。連携研究者保坂は同国南部のイスラム社会の歴史や文化を、現地調査を交えて調査研究すると共に、仏教とイスラムとの歴史的な交流についても検討する。また各地域のムスリムと仏教徒との共存関係を調査し、その現状や問題点についても両教徒から聞き取り調査をする。なお、釈は本課題を総括しつつ、仏キ間の論争の現地調査・資料収集・整理を行い、研究論文や啓蒙書さらにはメディアへの発表を行い、本研究が挑戦的かつ萌芽的研究として達し得たことに関して、また同国の諸宗教共存の思想やその現実展開の意味を広く世界に公表するように努める。保坂もまた、キャンディを中心にムスリムと仏教徒の共存の在り方を現地調査などで収得した資料を整理すると共に検討を重ね、今日までこれらの地域において研究された事のない論考や啓蒙書等を挑戦的かつ萌芽的にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度実施予定であった現地調査に関わる旅費並びに諸般の資料収集費及び人件費、物品費などに充当する。研究遂行に支障なく円滑に進められるように諸般の経費にあて、研究費をより一層適正かつ効率よく使用し、与えられた課題遂行に全力をあげる。
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