本プロジェクト最終年度、研究代表者釈は、引き続き「パーナドゥラ論争」論争に関係して、ペラデニア大学のニャーナナンダ教授の協力のもと、現地調査や資料の発掘、さらには現地の研究者への聞き込み調査を積極的に行った。今回は更に、ウルゴラダワッタ論争に関して、基本資料の発掘や現地調査をおこなった。またスリランカ・イスラームの躍進を、南アジア全域のイスラームの拡大と云う視点から検討する連携研究者保坂は、釈と共に現地調査を行い、さらにスリランカ・ムスリムの要人とインタヴューを行いスリランカにおける諸宗教の共存思想とその現状について研究を行った。 殊に、急激に勢力を拡大するイスラーム勢力は、新たな宗教対立を生む危険性を孕んでいるが、その一方でコロンボ屈指のモスクであるマラダナ・モスクのイマームは、同行した仏教僧に、「このモスクの歴史上はじめての僧侶の訪問である」と感激し、研究に多くの便宜を図ってくれた。恰も、我々のコロンボ滞在中に、コロンボのモスクへの爆弾テロがあり、その事件をめぐる報道に対する仏教、イスラーム、有識者など多方面の言説を直接聞くことができ、スリランカの諸宗教共存の問題点について、多くの知見と分析結果を得られたことは、大変有益なことであった。 スリランカは、平和社会の復活とその経済復興の途上に在り、宗教の共存等の問題には手がついていない。しかし、今後民族問題に、宗教対立の問題が再燃する懸念があるが、本プロジェクトの目指す宗教共存思想の研究成果は、スリランカ社会建設に有益な提言ができると予想される。 なお既に、本研究成果の一端は“The Great Debate of Urugodawatta”にて英訳及びシンハラ語を公開し、スリランカのみならずグローバルな視点において挑戦的かつ萌芽的発信すると共に、全体の最終研究成果を目下出版準備中である。
|