研究課題/領域番号 |
23652014
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
浅見 洋 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (00132598)
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研究分担者 |
志村 恵 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50206223)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ゼーゾルゲ / 悲哀 / グリーフケア / 死生観 |
研究概要 |
スピリチュアルケア(spiritual care)やグリーフケア(grief care)は現代のターミナルケア(terminal care)の展開として見出されたケアであり、その思想的源泉はキリスト教のゼールゾルゲ(Seelsorge、魂のケア)と言われる。ゼールゾルゲとは信者の日常の悩みや問題の解決をより深い次元から、魂の救いとして導くための聖職者の関わりであり、欧米のスピリチュアルケアの考え方や臨床にはゼールゾルゲにおける宗教的要素が保持されている。それに比して、現代日本の医療現場におけるスピリチュアルケアは宗教的なものを排除する傾向がある。本研究の目的は、日本ではほとんど紹介されることがなかったドイツ語圏のゼールゾルゲを悲哀(グリーフ)に焦点をあてながら思想史的に考察することによって、現代日本におけるグリーフケアの思想史的理解を行うことである。 平成23年度はまずSeelsorge関係の文献、特にSeelsorgelehre(「魂のケア」教科書)とTrauer (greef、悲哀)に関するドイツ語、英語、日本語の文献収集を行った。それによって、Seelsorgeの悲哀理解に基づきながら、S. Freud以降の臨床心理学的な死別研究と日本思想(西田幾多郎や綱島梁川)における悲哀の理解との比較思想的な考察を行った。さらに、併行して、現代のドイツ語圏において悲哀に関する最も代表的著作とみなすことが出来るKerstin Lammer;Trauer verstehen. Formen-Erklaerungen-Hilfen,2004の翻訳、刊行準備を研究分担者、協力者たちと協力しながら遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献収集と翻訳作業は研究計画に従って順調に進んでいる。また、S. Freud以降の臨床心理学的な死別研究と日本思想(西田幾多郎や綱島梁川)悲哀理解の比較研究として「悲哀の救いと癒し-綱島、西田、そしてグリーフケア-」を比較思想学会で発表した。しかし、平成23年度は大学の校務等の関係で、ドイツ語圏での現地調査は十分にはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に、現代のSeelsorgeにおける悲哀の理解に基づいて、グリーフケアに関して思想史的論文を公表する(『石川看護雑誌』を予定)。また、研究分担者、研究協力者と連携を取りながらKerstin Lammer;Trauer verstehen. Formen-Erklaerungen-Hilfen,2004の翻訳を平成24年8月を目途に刊行する。また、研究調査と翻訳の打ち合わせのために、Kerstin Lammerなどドイツ語圏の悲哀研究者を訪問する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度にドイツ語圏での現地調査が行えず繰り越した約27万に20万を加えて47万を、現地調査とドイツ語圏の悲哀研究者との研究打ち合わせを行う旅費として計画した。また、物品費(研究資料購入)10万、人件費・謝金(研究協力者への謝金17万)、その他3万(主に消耗品費)を研究費として計上している。
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