研究概要 |
本研究の目的は日本ではこれまでほとんど紹介されてこなかったドイツのゼールゾルゲにおける悲哀の理解を紹介することである。ゼールゾルゲの悲哀理解の紹介としては、現在のドイツ語圏でよく読まれているグリーフケア文献の一つであるKerstin Lammer;Trauer verstehen, Formen-Erklaerungen- Hilfen, 2004の邦訳を刊行した。本書では、悲哀におけるゼールゾルゲの役割は心理療法的な癒しであると同時に、喪失の意味を探すことであると記されている。また、悲しみを抱える人に寄り添うために、悲哀プロセスの理解として従来の「段階モデル」に対して「課題モデル」が提示されていた。また、本研究ではS・フロイト以降の臨床心理学と日本思想における悲哀の理解の比較思想的な考察を行った。その結果、臨床心理学のアプローチでは悲哀克服の方法として「死者との関係を断ち切ること」が目標とされていた。それに対して、日本思想では「死者との関係を再構築すること」が目標とされていた。
|