研究課題/領域番号 |
23652016
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
木島 史雄 愛知大学, 現代中国学部, 准教授 (50243093)
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研究分担者 |
安松 みゆき 別府大学, 文学部, 教授 (40331095)
藤原 貞朗 茨城大学, 人文学部, 教授 (50324728)
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キーワード | 美術受容 / 欧州と東洋 |
研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き資料収集と、これまでの収集資料の整理・分析を行った。 木島は2012年8月2日より12日まで、ローマ(イタリア)「国立東洋美術館」「カピトリーノ美術館」「国立美術館マッシモ館」、リスボン(ポルトガル)「マカオ文化博物館」「国立東洋博物館」、ヴァリャドリッド(スペイン)「東洋美術館」、マドリッド(スペイン)「プラド美術館」などにおいて東洋美術の収蔵作品の有無ならびに東洋美術に影響を受けた美術作品の有無について調査した。その結果、ほとんどの美術館が所蔵する東洋美術品は青銅器並びに陶磁器であり、書画の収蔵は極めてまれである。書画作品の収蔵には華僑をはじめとする中国人の関与が必ず見られる事などが明らかになった。この知見は分析を経て欧州人の東洋美術受容理解につながると思われる。 藤原は、2012年12月7より13日まで、 パリ(フランス)「ギメ美術館」「国立図書館」において、関連資料の調査を行いフランスにおける東洋美術の受容に関して知見を得た。美術館の現所蔵品だけでなく、図書館における資料収集によって、文献的・歴史的な東洋美術の受容に関する知見が得られた意義は大きい。 安松は、2012年10月28日から11月6日まで、ベルリン(ドイツ)「ベルリンアジア美術館図書館」、ミュンヒェン(ドイツ)「民族博物館図書館、文書館」「ニュンフェンブルク城」において資料収集を行った。ドイツにおける日中美術研究に関する資料をベルリンの美術図書館、アジア美術館の図書館にて調査し、一部を収集した。ミュンヒェンでは、Freunde asiatischer Kunstvereinの資料を探していたが、その関連する一次資料を入手することができた。 また3人とも研究成果を踏まえて論文の執筆を進めており、一部は学会・研究会などで発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ当初の計画通り進行している。研究開始時点に比べて資料が蓄積され、亦それにつれて次の研究課題が明らかになるなど、資料収集にとどまらない展開が起きた。 木島の資料収集により、東洋美術の受容愛好にかなり偏向があることが明らかになり、さらなる調査の指針として、美術商の活躍、宣教関係者の動向、中国人による収集アドバイスなどの問題が浮かび上がってきた。 藤原の資料収集により、図書館資料を用いた文献的・歴史的な東洋美術の受容の資料的裏付けが可能であることがある程度確認された。またこの局面でも美術商の活躍、宣教関係者の動向、中国人による収集アドバイスなどの問題が文献的・歴史学的な資料として利用しうることが明らかになった。 安松はドイツにおける日中美術研究に関する資料をベルリンで収集したが、関連資料が十分に公開されて居ないことが明らかになり、今回の科研費での十分な調査が困難なことが明らかになったが、手段、見通しは得られたので周到な準備を以て再調査に望む必要が浮かび上がった。またミュンヒェンでは、Freunde asiatischer Kunstvereinの資料を探していたが、その関連する一次資料を入手することができた。この協会については、現地でも知られておらず、おおむね関連資料が、こちらですでに調べていた資料にあたることがわかった。この活動を追うことには、意味があり、またその調査方法も適切であることが、今回の調査から認識できた。またミュンヒェンでのアジア趣味を確認するために、ニュンフェンブルクを見学し、まだ明確に知られていない陶器が日本製であることを実見した。 以上のように新たな研究展開への示唆が得られた部分もあり、また研究資料収集の困難さが明らかになった部分もあるが、おおむね資料の存在場所と性格について見当がつく状態になっている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度はすでに収集した資料の整理分析を各人が行うとともに、それぞれの分担地域の受容状態について理解を共有することをめざし、これまで以上に3者間の討議を進める。またそれに従って補足的な調査が必要となる可能性もあり、研究成果の発表へ向けて周到にスケジュールを進めてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に三者による検討会のための旅費が中心になり、研究成果共有のための物品購入がそれに付随する。
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