西欧における東洋美術の収集と鑑賞は骨董趣味としてはじまり、後に「美術史的」研究となったが、「書画」に冷淡であることが本研究によって明らかとなった。これは西洋的手法では東洋書画の魅力を十分に受容できなかったことを意味する。その弱点は、「主題の文学依存」、「書と画の一体的・総合的表現」、「鑑賞言説(題跋)の重要性」といった文字文献とのつながりへの理解不足にある。とりわけ鑑賞者が作品に与える文章(題跋)が、造形作品自体と一体となって次の新しい鑑賞対象となるという枠組みは、西洋的鑑賞法には無いもので、発展性にすぐれ、最先端の受容理論と有機的に関わって芸術行為の新たな展開と豊饒化の鍵となりうる。
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