研究課題/領域番号 |
23652019
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
五十殿 利治 筑波大学, 芸術系, 教授 (60177300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 美術史 / 展示 / 韓国 |
研究概要 |
本研究は15年戦争期の画廊、とくに東京銀座の画廊を主要な対象として、万国博における「国家表象」の展示や官展等における「展覧会芸術」への対抗文化として、また美術家の表現意識が相対的に自由に発露した空間として考察するものである。 本年度の計画は(1)銀座の画廊についての基本情報の収集整理、(2)美術雑誌上の会場写真の収集整理、(3)以上の収集資料による包括的ならびに個別的な考察、(4)考察結果についての共同研究会の開催と研究交流であった。 (1)については、銀座で1937(昭和12)年に開設された短命な画廊「ブリュッケ」について調査研究を進めた。同画廊は外観内装、さらには案内パンフレットや展示カタログのデザインにもモダニズムが反映しており、さらにフォト・デッサンを発表したばかりの瑛九、グロッスに影響を受けた柳瀬正夢らが関係した展覧会を開催した場所で、注目される活動を行ったもので、その概容を示した。(2)については、『美術新論』(後継誌『美術』)を系統的に収集した。(3)以上の調査研究の一部の成果を学会誌において公表した(「一九三〇年代東京の展示空間とモダニズム」『近代画説』、20号、2011年12月)。(4)については、本年1月28日に金英那(国立中央博物館長)ならびに睦秀炫(ソウル大学研究員)とともに、研究会を開催した。睦と五十殿がそれぞれ当該の時代におけるソウル(デパート、カフェなど)と東京(「ブリュッケ」と「日本サロン」)の展示空間について話題提供を行い、討議を行うとともに、今後の研究方針について確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集については、これまで研究者間では未詳であった銀座紀伊國屋書店の外観写真を学会誌掲載論文において掲載するなど成果を出したが、美術雑誌の収集では、当初予定していた雑誌が稀覯書となっていたり、高額であったりするなど、必ずしも計画通りに進んでない。 しかし、研究成果の発表、海外の連携研究者を交えた研究の開催など、研究活動全体として判断して、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上の達成度から判断して、予定された研究計画を方針通りに着実に実施するように努める。 ただし、美術雑誌の収集についてはより積極的に取り組み、基礎的な資料の整理を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、上でも述べたように、美術雑誌が稀覯書となっていたり、高額であったりするために入手困難で、繰越額が生じた。 次年度の計画は、(1)銀座の画廊についての基本情報の収集整理、(2)美術雑誌上の会場写真の収集整理、(3)以上の収集資料による包括的ならびに個別的な考察、(4)考察結果についての共同研究会の開催と研究交流、となっている。 物品費により、美術雑誌の購入を今年度以上に積極的に行う。また、人件費により、こうした美術雑誌上の会場写真を収集整理を行う。 さらに、旅費によって、画廊等の展示空間に関する調査を国内外で実施するとともに、海外連携研究者を交えて調査内容について吟味する研究会を開催する。
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