研究課題/領域番号 |
23652025
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
滝 一郎 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80242072)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ベルクソン / アナロジー / 美学 / 哲学 / 思想史 |
研究概要 |
パリのジャック・ドゥーセ文学図書館には、ベルクソンが1891-93年にアンリ四世校で行った哲学講義をアルフレッド・ジャリが聴いて記したノートが保管されている(整理番号BGN3023, IX.BGN.III.29)。そのなかのBファイルには「美学講義」が含まれている(B78-B88)が、この未定稿のパリ版「美学講義」(1892-93)を既に刊行されているクレルモン・フェラン版「美学講義」(c.1887)と比較すると、ベルクソンの思想の曲折をたどることができる。 パリ版「美学講義」は「美」を論じた部分と「芸術」を論じた部分とからなっている。前者は「美的概念」および「美の観念について」、後者は「1.芸術の定義」「2.いかなる方法で芸術はその目的を達成しうるか」について述べられている。 芸術を論じた部分に注目すると、クレルモン・フェラン版では、「芸術は美の産出を目的とする。......芸術は人間的な何ものか、つまり感情や思惟や活動を感覚的な形のもとに表す」として、おもに芸術と人間との関係を主観の側から問題にしていたのに対して、パリ版では、「芸術は美の表現である。......芸術は美の延長である」と言われ、芸術が自然の模倣であるか否かが問われて、むしろ芸術と自然との関係が客観の側から問題とされ、更に、芸術と科学、芸術と道徳との相違を明らかにしようとしていること、その他、ルナン、ヘーゲルの弟子のシュナイダー等の理論を紹介したうえで、これを修正しようとしていることなどが注目される。ベルクソンの芸術論が観念論的な立場と実在論的な立場との間を揺れ動くということ、その点にイマージュの生成をめぐる美学の可能性を探ることができよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「アナロジーの美学」に関する準備的な研究の成果を、予定通り、5月に台北でのIAPL国際哲学文学連盟で、8月に内モンゴルのフフホトでの美学会議で発表し、ベルクソン哲学と東洋思想(荘子、大塚保治)との関係を比較思想史的観点から考察することができた。 学年末にはパリのジャック・ドゥーセ文学図書館を訪れて、所期のアルフレッド・ジャリによる聴講ノートを中心に調査した。ジャリの悪筆は、予想通り解読に時間がかかるが、今年度はその大要をつかむことができた。 そのほか、テクスト生成研究の観点から、ベルクソンが使用したプロティノスの原典(1884年刊行のVolkmann版)のマルジナリア(欄外の書き込み)を調べ、そこにアナロギア・イマギナリス(創像的類比)の思想の萌芽を認めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、パリ版「美学講義」の校訂と注解、そして「美学講義」のクレルモン・フェラン版とパリ版との比較照合を行って、ベルクソンの美学思想の変化をたどる一方、「アナロジーの美学」に関連する研究発表を積極的に行って、国内外の研究者たちと連絡を取り合ってゆく。発表予定は、5月にエストニアのタリンにおけるIAPL、8月にルーヴァンにおけるASPLF、9月に中国の瀋陽における東方美学国際会議および大阪教育大学における新プラトン主義協会全国大会の都合四回である。 今後は、「美学講義」のベルクソン哲学における意味(芸術と道徳との類比をめぐって)と思想史上の位置(東洋美学ならびにプロティノスの哲学との関連をめぐって)とを考察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、ジャック・ドゥーセ文学図書館での調査が一度しかできなかったため、135,859円執行残となったが、次年度には同図書館への調査費にこれを組み込んで、更に研究を続行したい。 次年度の研究費(直接経費)の使用内訳は、物品費20,000円、旅費635,859円、人件費・謝金80,000円、その他20,000円、計935,859円である。
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