研究課題/領域番号 |
23652029
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 惠里子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20292493)
|
キーワード | 国際研究者交流 / 連合王国 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
平成24年度は、(1)明治日本におけるラファエル前派に関する言説の収集、(2)来日した英国人芸術家や教師と日本におけるラファエル前派受容との関係の調査、(3)ラファエル前派の影響を受けた明治浪漫主義芸術の分析に研究の重点を置いた。これらの調査は、筑波大学、一橋大学、早稲田大学の図書館他、ロンドンのナショナル・アート・ライブラリー、ヴィクトリア&アルバート博物館、テート・ブリテン、ナショナル・ギャラリーで行った。また、日本におけるラファエル前派受容とイタリアにおけるラファエル前派受容の比較研究を、ローマのブリティッシュ・スクール等で行った。これらの調査研究の成果を、論文「英国ヴィクトリア朝の日本趣味と明治芸術のラファエル前派受容――中世主義と装飾芸術を結び目として」(『日本とヴィクトリア朝英国――交流のかたち』所収)にまとめて出版した。また、2013年1月10日には、ロンドンのポール・メロン・センターイギリス美術研究所で行われたワークショップ"Internationlised Pre-Raphaelitism"に招待され、"Pre-Raphaelite Medievalism in Japan: Decorativeness in Art and Literature in Meiji Romanticism"と題した口頭発表を行った。さらに、『文化交流研究』8号(筑波大学)で「装飾論」の特集を組み、序論を執筆した他、論文「D. G. ロセッティの装飾的中世――《エルフェン=ミアの乙女たち》とモクソン版『テニソン詩集』の挿絵から」を発表した。 平成24年9月には、ロンドンのテート・ブリテンで「ラファエル前派展」が開催された。展覧会では、ラファエル前派の研究者と情報交換を行い、シンポジウム・ワークショップの打合せを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」に沿って、ラファエル前派の中世主義とジャポニスムの接点、およびラファエル前派芸術の明治芸術への影響を追跡した。 「交付申請書」の研究計画欄に記した研究成果の口頭発表としては、研究実績の概要で記したように、ロンドンのポール・メロン・センターのワークショップでの招聘による口頭発表を行い、各国の研究者と情報交換・意見交換をすることができた。また、研究成果を書籍(共著)として出版したほか、研究をふまえた論文も発表した。さらに、研究を進め、現在、ラファエル前派に関係した編著を準備中である。 平成26年1月には、東京の六本木アーツ・センターで「ラファエル前派展」が開催される。その展覧会に併せて、国際シンポジウムとワークショップを開催する予定であり、現在準備をすすめている。 研究実績の概要で記載した(2)の来日した英国人芸術家や教師に関する研究は、現在も続行中であり、今後も資料の収集を続けて行う。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究計画に記載した課題である明治日本の「日本人のための日本」運動で用いられたラファエル前派関連の言説および作品の調査研究を行う。この研究と並行して、現在準備中の編著『ロンドンーアートとテクノロジー』(平成26年度刊行予定)に寄稿する論文(ラファエル前派論)を完成させる。この書籍は、19世紀ロンドンを舞台にして、アートとテクノロジーとの関係を追究することを目的としており、本研究とも深く関わる。 また、平成26年1月から六本木アーツ・センターで開催される「ラファエル前派展」と併せて、国際シンポジウムとワークショップを開く予定である。アメリカ合衆国からはティム・バリンジャー氏(イエール大学教授)とジェイソン・ローゼンフェルド氏(メアリマウント・マンハッタン・カレッジ教授)、連合王国からはアリソン・スミス氏(テイト・ブリテン)を招聘し、国内からもヴィクトリア朝美術・文学研究者を招聘する。このシンポジウムとワークショップは、本研究の成果の発表の場ともなる。 以上の研究のための四郎は、国内外の図書館・美術館で収集する。日本では、東京芸術大学図書館、ブリヂストン美術館、石橋美術館等、国外ではロンドンのナショナル・アート・ライブラリー、大英図書館、テート・ブリテン等で調査研究を行う。 3年間の研究の総括として、成果を書籍のかたちで出版したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|