研究課題/領域番号 |
23652036
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大田 美佐子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40362751)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音楽文化 / 異文化交流 / 亡命芸術家 / 大衆音楽 / 評伝 |
研究概要 |
本研究は、「亡命芸術家による文化的アイデンティティの再構築に関する包括的研究」と題して、西洋芸術音楽の歴史のなかで看過されてきた「亡命以後の作曲家と大衆芸術との関わり」について、「文化的アイデンティティの再構築」という視点から捉えることにある。彼らの活動内容を「伝統と交流」「受容と波及」「新しい美学の構築」という視点から整理したい。 方法としては、亡命芸術家の対象範囲が広範であるため、まず亡命芸術家である「クルト・ヴァイル」の評伝の執筆を目指し、今回の研究ではそこに関わった人々を相対的に位置づけることを目指したい。 23年度は、研究実施計画でも予定していたように「文献収集」を行った。特に、10月にドイツのマインツにある「キャバレー博物館」で、協力的な支援を得ることができ、大戦間のベルリンで活躍した芸術家たち、キャバレーの立役者たちの亡命以後の活動に関する貴重な記録を閲覧、収集することができた。また、戦後1970年代にベルリンで開催された「亡命芸術家によるコンサート」や亡命芸術家に関する貴重な映像や作品などを実見することができた。マインツのキャバレー博物館での作業では文献収集のみならず、「Kelinkunst(小さい芸術、転じて大衆芸能)」と呼ばれるキャバレーが、ドイツの文化的アイデンティティのなかにどのように位置づけられていったのか、というプロセスを実感することができ、今後の研究に関する貴重な視点を与えてくれた。 また、2011年10月のドイツでは、キャバレー文化のなかで生まれた音楽劇「三文オペラ」の多様な解釈による演出を実地調査した。この作業は、ヴァイルの評伝のなかで、キャバレー文化を位置づけるにあたって、重要な示唆に富むものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画のように順調に進んでいる点と、遅れていると考える点がある。 順調な点は、ドイツのマインツ「キャバレー博物館」における調査で、ことのほか協力的な支援を得ることができたため、亡命芸術家の資料の把握に展望が生まれたためである。 また、遅れている点はアメリカでの調査である。当初の計画では、23年度以内にアメリカで亡命芸術家、亡命キャバレーの資料を収集する予定であった。しかしながら、燃油加算税の高騰があり、予定していた予算では渡米できなかった。しかしながら、渡米前にある程度調査対象を絞り込めるという利点も感じている。渡米しての調査は、24年度の後半か25年度の前半には実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
クルト・ヴァイルの評伝と、キャバレーを中心とした亡命芸術家の調査研究にはシナジー効果があるものの、時間的には24年度は評伝を執筆することを優先したい。そして、24年度の夏までに亡命芸術家の対象(人、作品、グループ)などを絞り込み、ヨーロッパ調査(マインツ、ベルリン、ウィーン)、渡米調査の準備をしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の夏までに亡命芸術家の対象(人、作品、グループ)などを絞り込み、ヨーロッパ調査(マインツ、ベルリン、ウィーン)、渡米調査の準備をし、24年度後半か25年度の前半までにアメリカ、ドイツ、オーストリアでの文献調査を実施したい。
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