研究課題/領域番号 |
23652038
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小谷 充 島根大学, 教育学部, 准教授 (00283044)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タイポグラフィ / グラフィックデザイン / 映画 |
研究概要 |
当該年度では,映像タイポグラフィの理論構築を目的として,印刷出版で活躍するグラフィックデザイナーがタイトルクレジットを制作した映画『銀河鉄道の夜』(1985)(以下,対象作品)の組版手法について,以下のように研究を実施した。1)対象作品におけるタイトルおよびクレジットの組版ルールを抽出した。: 対象作品の静止画像を取得した後,使用書体や字間行間などの基本設定を推測し,組版仕様書を作成。それに基づいて,写植印字を発注し,仕上がったデータを静止画像に重ねて検証をおこなった。その結果,(1)タイトルの一部に当時使用が困難だった金属活字書体が混植されている,(2)字間が一文字ずつ手動で調整されている,(3)飾り記号や罫線などが使用されている,などの特徴が確認できた。それらの要件は,当時の映画タイトルにはほぼ確認できない特殊な事例であることから,対象作品の組版設定は印刷出版物のノウハウによって構成されている可能性が高い。2)デザイナー・羽良多平吉による印刷物のデザイン手法とその特質を明らかにする準備として,資料収集をおこなった。: 対象作品の原案・ますむらひろし(原作は宮澤賢治)の単行本『銀河鉄道の夜』を中心に,羽良多が図書設計を担当した絶版図書を収集した。また,映像と宣伝の違いを考慮して,映画パンフやチラシなどの宣材,映画設定資料集などの関連図書を購入した。これら出版物と映画タイトルのデザインを比較検討することで,羽良多が両メディアのタイポグラフィをどのように捉えていたか確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画として予定していた(1)調査対象作品のタイトルロゴおよびクレジットの調査,(2)調査対象作品のタイトルロゴおよびクレジットの再現,(3)ビジュアルコンセプトや処理方法への仮説,が完了している。(3)については収集した資料を基に,さらに検証を進める必要があるが,平成24年度計画としていた書体や活字資料の裏付け調査がやや先行していることから,おおむね計画の通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究成果を踏まえ,平成24年度には(1)対象作品の組版ルールと印刷物における特質との比較検討,(2)対象作品におけるデザイン手法および作品背景との関連性についての考察,の二点を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度では消耗品価格が当初積算より安価であったため、次年度に繰り越し、平成24年度使用について以下のように計画する。1)同定用フォントパスポートの更新費用…57,960円2)検証用写真植字印字費…42,040円3)投稿論文抜き刷り…30,000円4)映像および図書資料一式…70,028円
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