研究課題/領域番号 |
23652040
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研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
石垣 享 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (60347391)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音楽学 / 感覚と運動発達学 / 生体情報解析 |
研究概要 |
本研究は、これまで未知であった打鍵技能の発達過程の解明を目指すことである。この課題を達成するために、子ども達が打鍵に適した上肢動作をいかにして獲得していくのかを筋電図および3次元動作解析の縦断測定により明らかにしていくことが目標となる。本研究は、幼児および児童を対象とした縦断研究であることから、毎年夏休みに実験を実施する予定であった。このためにH23年度では、7月下旬までに機器をセットアップし、8月上旬に予備実験により測定手法を確定させ、8月下旬から今後3年間に亘る縦断測定を開始するはずであったが、研究費補助金の支払いが未確定なために被験者および実験補助者に対する謝金が支払えないことから、予備実験レベルで研究がストップした。ただし、この予備実験で得られたデータを基にして、当初の予定であった第10回日本発育発達学会(3/17)において研究発表を行った。実験方法は、グランドピアノでドミソの和音をピアニシモからフォルティシモまで8段階で弾く課題とした。測定項目は、音圧、上肢の表面筋電図および3次元動作解析であった。この結果、児童の音圧調節は、前方に手掌部を持ち上げ、打鍵時には手前に引く肘を支点とした円運動であり、学齢が上がるに連れこの特徴が明らかとなることが判明した。ただし、音圧を調整する能力に優れる者は、ピアノ経験年数および年齢に関係なく、上腕三頭筋および長橈側手根伸筋を用い、肩を支点とした円運動による打鍵動作で音量を巧みに調整する可能性が示唆された。さらに、上半身の動作解析の結果、手首および首の平均移動距離の身長比は2.15および2.30で有意差は認められなかった。しかし、両部位の差を個々で比較すると小学2年生以下では-0.60であり、それ以上の学齢では1.10と相反する結果となった。したがって学齢が低い者は、上半身の前屈動作で音量を獲得しようとする傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は3年間の縦断研究であることから、初年度に多くの被験者を同一条件で測定する必要があった。当初の予定では、被験者50名による実験を計画していたが、研究費補助金の支払いが未確定なために被験者および実験補助者に対する謝金が支払えないことから、予備実験レベルで研究がストップした。なぜなら、本研究は幼児および児童を対象とした縦断研究であることから、毎年夏休みに実験を実施する予定であり、残りの支払いが許可された時点では実験を行える時期を逃していたからである。この予備実験で測定した中でデータとして使用可能な被験者数は13名であり、縦断研究のスタートとしては、大きく出遅れることとなった。しかしながら、予備実験による研究データを詳細に検討した結果、特徴的な動作を抽出することが出来、学会(第10回日本発育発達学会での優秀研究賞の候補)および論文による研究報告が行えるレベルの研究は実施出来ていた。これに加えて、研究手法を完璧に確定させることができ、注視すべき点を見出すことが可能であったことから、今後の研究遂行を円滑に進めるには有効な1年であった。
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今後の研究の推進方策 |
実質、H24年度から縦断研究がスタートすることとなるため、多くの被験者(最大目標50名)を同一条件で計測するために8月後半に集中的に実験を行う。なお、実験手法は確立しているので、実験環境条件に差が出ないように気をつける。H24年9月から、得られたデータの中から、肩を支点とした円運動による打鍵動作で音量が調節されているのか、上半身の前屈動作で音量を獲得しようとしているのかを、各年代とピアノ経験年数との相互効果を中心に検討する。これらを当該年度の日本発育発達学会(H25年3月)および翌年度の日本体力医学会(H25年9月)で研究発表する。さらに、年度末までに打鍵動作の発育発達学的特徴を論文として報告する。最終年度は、解析データの蓄積および同一被験者における縦断的解析を行うことで、打鍵動作の発達過程の段階設定の検討を行う。この年度には、公開レッスンを兼ねたシンポジウムを愛知県立芸術大学奏楽堂で行う。さらに、バイオフィードバックレッスンの指導効果は、指導中の実際映像とその際の筋電図および動作獲得度で検証を加え、この手法の有効性が得られる年代を明らかにする。本研究の目指すものは、これまで未知であった打鍵動作の発達過程に対して科学的な根拠に基づいた指針を作成することであることから、日本体力医学会、日本発育発達学会そして音楽教育関係の学会で発表および学会誌へ投稿することで研究成果を公表する。成果を一般化できるのであれば、報告書形式で公表できるようにまとめ上げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、実験設備消耗品に予算の約3分の1、実験の被験者および測定補助者に対する謝礼が同様に約3分の1、2回の学会発表および論文による研究報告に残額を使用する予定である。なお、研究報告等に関して予算を超える場合は、個人研究費を利用する。
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