研究課題/領域番号 |
23652042
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
松田 嘉子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (80407832)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アラブ音楽 / チュニジア / エジプト / アンダルシア / ウード / 演奏法 / 教則本 / 古典音楽 |
研究概要 |
2011年1月のチュニジア「ジャスミン革命」をきっかけに、アラブ世界は激動の新時代に突入した。研究代表者は、その直前にはチュニジアに滞在していたが、23年度は関連領域であるエジプトやスペインのアンダルシア地方で研究の基盤づくりを行った。2011年8月にはカイロに滞在し、エジプト在住の音楽家や研究者たちと会うことができた。2012年3月末から4月初めに渡航したスペインでは、歴史的資料閲覧の他、現在にも及ぶアラブ文明のとヨーロッパ文明の融合の模様を多々確認できた。カイロ在住イラク人ウード奏者ナスィール・シャンマ氏、グラナダ在住モロッコ人歌手アミナ・アラウィ氏と会い、現在の活動の様子を取材できたことは、とくに大きな成果であった。ナスィール・シャンマ氏から贈られた最新の著書「ウード奏者の夢」は、自伝とウード教則本の二巻構成であり、その内容はアラブ音楽の諸楽派間の比較と最先端の現代的ウード奏法の研究に最重要なものである。アミナ・アラウィ氏から贈られた最新アルバム(Arco Iris, ECM)は、フラメンコ、ファドの要素を取り入れた現代アラブ音楽の美しい精華の一つである。23年度はこの他にも、第一線で活躍する音楽家たちとの交流から、現代アラブ音楽家たちの実践や作品の特質を知るための貴重な資料を入手できた。シリアのフセイン・サブサビー氏からは大著「ウード」を贈られた。この本には、ウード制作家でもある氏の長年にわたる楽器研究の結実を見ることができ、また氏を含むアラブ世界の最良のウード奏者たちの最新の楽曲が収録されている。2011年11月には、欧米でも評価の高いチュニジアのウード奏者リアド・フェヘリの来日公演を聴取したが、DVD'Tapis rouge'には、西洋クラシック音楽とアラブ音楽の融合が見て取れる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年1月にチュニジアで革命が起き、しばらくの間現地での研究調査が困難であったことに起因する。しかし、音楽家たちとの交流や関連領域での研究により、資料や情報収集という点では、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
チュニジアおよび他のマグリブ諸国、エジプト、トルコ、ヨーロッパなどを視野に入れながら、研究調査を実施する。音楽家への聞き取り調査、資料収集と整理を行う。なかでも、アラプ音楽諸楽派によるウード演奏法の多様なスタイルの解析や、教授法の研究、教則本の執筆準備などに注力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度未使用額が約360,000円発生した。その理由は、スペイン出張旅費の約300,000円が23年度と24年度にまたがるものであり、クレジットカードによる外貨での支払いのため日本円に換算されるまで時間がかかったからである。残りの残額については、研究費を効率的に使用したため、生じたものである。24年度は、平成23年度と同様に、チュニジアや関連領域への出張旅費、当該研究に係る書籍や音・映像資料の購入、録音関係の機材やソフトウェアの購入、音楽家や研究協力者への謝礼、などに使用する。
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