研究課題/領域番号 |
23652043
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研究機関 | 昭和音楽大学 |
研究代表者 |
糟谷 里美 昭和音楽大学, 音楽学部, 講師 (70266245)
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研究分担者 |
川染 雅嗣 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (10204728)
鈴木 二美枝 昭和音楽大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (40442123)
高橋 健一郎 札幌大学, 外国語学部, 教授 (80364206)
豊住 竜志 昭和音楽大学, 音楽学部, 准教授 (20227656)
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キーワード | 音楽と舞踊 / バレエ・リュス / エジプトの夜 / レ・シルフィード / ミハイル・フォーキン / アレンスキー / ショパン |
研究概要 |
本研究は、バレエにおける音楽と舞踊の関係性について、音楽・舞踊・音楽史の三領域の視点からバレエ・リュス作品に関する実践的研究を行なうことを目的としている。 前年度にはバレエ・リュス初期の作品《クレオパトラ》の元になった《エジプトの夜》(ミハイル・フォーキン振付)に焦点を当て、音楽(アレンスキー作曲)の分析(主にピアノ譜からのオーケストレーション)および作品の成立背景とバレエ・リュスでの改訂上演への展開についての調査研究を行なった。 そこで得られた知見を踏まえ今年度は、①オーケストレーションされた楽譜の実践演奏を通じて、フォーキンがなぜこの音楽をバレエに使用したのかを検討し、さらに、②19世紀ロマン主義音楽を使用したバレエ・リュス初期の《レ・シルフィード》(フォーキン振付)にも着目し、バレエのために作曲されたのではない音楽のバレエへの転用の可能性を検討した。本研究により、第一にアレンスキーのバレエ音楽《エジプトの夜》がフォーキンにとってその後のバレエ振付に重要なヒントを与える楽曲であったこと、第二に19世紀ロマン主義音楽には、舞踊の進行に類似した演奏の技術的要素が含まれている楽曲があり、それらがバレエに適している可能性があるという示唆が得られた。 今年度は、これまでの成果の実践的発表の場としてシンポジウムを開催し、実践的視点からの理論構築をめざし、有意義な多角的議論を交わした。その中で、今後の課題となったのは、舞踊の実践的側面への掘り下げである。次年度は、この点に注目し、特に《レ・シルフィード》の舞踊を分析することで、これまでに得られた知見の検証を行なっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特徴は、音楽と舞踊の関係性を探る上で、より実践的検証を行ないながら研究を遂行していくことである。昨年度は音楽、舞踊、音楽史の三領域が個々の課題を進めた。今年度は各々の研究成果を融合すべくシンポジウムを開催した。このシンポジウムでは、①調査研究に基づく基調講演 ②これまでの研究を三領域から多角的に検討するディスカッション ③実践的演奏による理論の検証 を行なった。これは、20世紀初頭のバレエ・リュス作品を掘り下げるだけにとどまらず、現在においても有用な実践的知見が得られたという点で、この特徴を十分に活かしたと考えられ、それゆえ研究計画も順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究成果を踏まえた上で、残された課題、すなわち舞踊の実践的研究を遂行していく予定である。そのための映像資料はすでに入手済みである。しかし、バレエ・リュス初期の振付家ミハイル・フォーキンの思想に迫る文献資料が不足しているため、次年度はその入手に努めるとともに、映像資料における舞踊の分析を行なっていく。 舞踊分析のための映像は、ミハイル・フォーキンが1940年以降米国を中心として《レ・シルフィード》の再演を行なっているため、アメリカン・バレエ・シアターの映像資料を対象とする。また、分析方法にはラバノーションあるいはベニッシュ。ノーテーションを用い、舞踊の特徴を明らかにした上で、音楽と舞踊の関係性について考察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、次の通り使用する予定である。 ①文献資料の追加収集 ②成果論文の作成 ③研究成果報告書の作成 ④研究備品(CD-R,DVD-R等)
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