研究課題/領域番号 |
23652050
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武井 和人 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80154962)
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キーワード | 新百人一首 / 式子内親王集 / 歌会資料 / 高松宮本 |
研究概要 |
平成23年度に典籍調査を行った『式子内親王集』諸伝本に関して、一通りの整理が完了した。特に、新出伝本である清水浜臣書入版下稿本に関して、集中的に検討・精査を行った。その報告は、和歌文学会・東京例会にて口頭発表し、引き続いて、勤務先の紀要に論文として研究成果を示した。 平成24年度から新たに検討対象として、足利義尚編『新百人一首』及び未刊中世歌会資料を追加した。いずれも当初、研究対象には含まれていなかったものである。 『新百人一首』は、平成24年6月、流布本とは全く配列の異なる一伝本を入手したことを契機に、先行研究を確認したところ、いまだ緒についたばかりの段階であることが分かつたので、現在、諸伝本を調査、本文校合を行っているところである。研究成果は、平成25年度中に公開したいと考えている。 歌会資料は、国立歴史民俗博物館蔵高松宮旧蔵本のうち、未刊のものを集中的に調査し、試行的に翻刻等を進めた。 『式子内親王集』『新百人一首』、ともに、伝本系統を極めて明確な形で分けることが可能であり、その意味で、本文校勘の基本的問題を考える上で、またとない資料であることが確認出来た。また、歌会資料は、孤本が多く、校勘の方法を考える上で、有用なサンプルとなるであろうことが確認出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究テーマとしていた『式子内親王集』の伝本調査はほぼ完了し、本文に関する考察についても、論文を計3編公刊し、学会での口頭発表を1件行うことが出来た。 さらに、新たな研究テーマとして、足利義尚編『新百人一首』を選定し、伝本調査は概略完了し、現在、本文校合を行っているところである。平成25年度中には、論文2編を公刊する予定である。 また、最終的研究テーマである校勘の方法に関する原理的考察は、笠間書院より書き下ろしの単行本として刊行する予定である(ただし、今年度より書き始めるので、今年度中の刊行は難しい)。 以上のような進捗状況であり、研究は予定通り概ね達成されていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、『新百人一首』の伝本系譜、成立過程、本文等の研究成果を2編の論文にして公表する予定である。 一つは、伝本の整理、成立過程の新説を提示するもので、平成25年11月に刊行される『國學院雜誌』に掲載される予定である。 いま一つは、『新百人一首』の校本(ただし、諸本調査が完全には済まないので、「簡校」という形になると思われる)で、勤務先の紀要の掲載を目標に、現在作業を進めているところである。 『式子内親王集』『新百人一首』、及び以前から資料の蒐集・検討を進めてきた十市遠忠自筆資料などを検討対象として、『本文はなぜ揺れ動くか(仮題)』というタイトルで書き下ろしの単行本を公刊すべく、平成25年度よりその執筆に入りたい。ただし、本年度中に執筆は終らないと思われるので、平成26年度以降の公刊となる予定である。本書は、本研究の成果を、当該研究分野の研究者はもとより、ひろく本文研究に関心のある研究者、そして、古典に関心がある一般読者にも理解してもらえるような内容にしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していた古典籍撮影の内、所蔵機関の都合により、撮影・焼付けが平成25年度に繰り越しになったものがあり、そのため、次年度使用分が発生した。
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