従来、古典作品の校勘(伝本間の本文異同を調べ考証し、より古いと思われる本文を復元すること)の方法として、池田亀鑑『古典の批判的処置に関する研究』で示された「誤写」を排除し、より古い本文を推定する、という方法が確立している。しかし、誤写だけで、伝本間の本文異同が説明出来るはずはない。そのことは、池田自身も十二分に認識していたところである。 本研究では、池田の唱えた「誤写」による説明方法に加え、古典作品の成立過程、流伝の状況、といった、文献学的な研究成果をより意識的・積極的に加味することで、校勘の「精度」をより上げられるということを、具体的ないくつかの作品の伝本・本文を検討することで立証した。
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