研究課題/領域番号 |
23652053
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
矢野 環 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10111410)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 能 / 世阿弥 / 謡曲 / 音曲 / 舞 / 系統学 / 異本 |
研究概要 |
世阿弥作の主要な能楽に関して、詞章に形態素解析を行い、文字の頻度や品詞から世阿弥の特徴を検討した。形態素解析を行う際には、中古の和文系資料(古典や古文)を解析できる「中古UniDic」を基準辞書とし、謡曲の解析に必要な語についてはユーザー辞書を作成した上で、形態素解析ソフトウェアMeCabを適用した。 この研究では、修羅物作品の成立過程において、重要である「兼平」を分析対象に加えた。形態素解析した結果を元に、品詞・語の相対頻度を主成分分析した結果、「兼平」という作品が、世阿弥の作品と助動詞の使用頻度において似ている事が示された。「兼平」を巡っては、世阿弥以前の創作説と世阿弥以後の創作説に分かれており、また、世阿弥作品説と非世阿弥作品説に分かれている。このように、研究者によっても、世阿弥作の是非を巡って見解が分かれる「兼平」が、品詞の傾向から世阿弥作品に非常に近接する事がわかった。助動詞の傾向から「兼平」が他の世阿弥作品に類似したという事は興味深い結果であった。 また、異本の発生を確認するため、古写本から江戸時代の主要写本を「忠度」などの謡曲について校合した。作品によってはすでに室町末期には世阿弥の時代とかなり変化している場合もあるが、また殆ど変化しない場合もある。特に、江戸時代には詞章の変化はほとんどない。系統学的考察は、異本校合の結果から十分な結果を得ることがわかった。 この研究においては、大学院博士後期課程岩田好美との共同研究の部分があり、国際会議においても連名にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、形態素解析によって算出した、謡曲の詞章の品詞及び語彙のデータを元に数理的分析を行い、世阿弥作品の助動詞の使い方に特徴があることが判明した。さらに、従来の能作者の同定研究の中でも、議論の分かれる「兼平」が世阿弥作品の特徴を持つことが判明した。 また、文献学的、系統学的な結果も得た。 以上のことより、十分な結果を得ているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
能とは詞章、舞、お囃子の3部で構成された舞台劇であり、各構成要素は、複雑かつ多種多様な情報構造を持っている。それゆえ、これらの構成要素の本質を損なう事なく、体系的にデータベースに実装し、それぞれの構成要素に対して適切な分析手法を選択する事が課題とされる。 また、より系統学的考察を深めることが必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連する古典籍の購入などに充てることが主体となる。
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