研究課題/領域番号 |
23652053
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
矢野 環 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10111410)
|
キーワード | 能楽 / 世阿弥 / 文献学 / クセ / 破調 / 堀池識語本 |
研究概要 |
能楽書の典型的データとして、岩波書店の『謡曲集』の校合データを整理した。また、主要約70曲のクセ部分の韻律を整理した。この作業には当時学部三年生であった手塚香奈が協力した。 前者の校合からの第一の結果として、観世系統の堀池識語本は確かに現行の観世と近い詞章を有し、宝生がむしろ下掛かりに近くなると判明した。また第二の結果として、世阿弥自筆(又はその写)は、下掛りの金春に近いところがよく認められ、観世と宝生はむしろ近い位置にあるとわかった。後者のクセの部分の韻律からみると、世阿弥の曲とされるものは番目毎によく纏まっていることがわかった。 これらの結果は極めて重要であり、2013年7月の Digital Humanity 国際会議(米国。ネブラスカ)にその内容で応募した所、採択された。別途印刷としても発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世阿弥の曲については、クセの部分と校合データとの双方からの研究が行えることとなり、その特徴がかなり明確になった。これは当初考えていたことであり、大学院生が行えばよいと思っていた部分もあるが、結局私が行うこととなったが、十分な成果である。 ただし、厳密に古写本をもちいたのではないので、それらの確認が必要であり、かつ、金春禅鳳の伝書など、今後も確認すべきものが多い。それらを総合すれば、謡曲の詞章についての文献学的研究の基礎ができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、古写本の確認を重点的に行う。法政大学が中心と成る。 また、他の芸道との比較も行う。 手法としては、古典的ならびに数理文献学により行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、能楽ならびに関係する室町芸道の伝書の購入に当てる予定である。 また、調査のための交通費とする可能性もある。
|