研究課題/領域番号 |
23652073
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
真野 倫平 南山大学, 外国語学部, 教授 (30257232)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 仏文学 / 演劇 / 科学史 |
研究概要 |
本研究はフランスのベル・エポックに作られた恐怖演劇であるグラン=ギニョル劇への同時代の諸科学、とりわけ精神医学の影響を解明することで、文学と社会の相互的影響関係を明らかにするものである。このように一つのジャンルを同時代の諸科学・ジャーナリズム・政治情勢・風俗などとの多面的な関連において調べることは、文学・芸術・科学・政治・社会を横断する学際的研究の実践として大きな意義を持つ。 今年度はまず、グラン=ギニョル劇、ならびに同時代の周辺諸科学に関連する基礎資料を収集した。資料の多くは今日では絶版となっているので、新刊の他に古書により購入し、あるいはフランス国立図書館に複写を依頼した。また、フランスへ国外出張を行い、フランス国立図書館で図書・新聞・雑誌等の資料調査を行った。また、国内の大学図書館でも資料調査を行った。このジャンルにはポスターや挿絵等の視覚的資料が数多く存在するので、コンピュータならびにプリンタ、スキャナなどの周辺機器、文書・画像を扱う各種ソフトウェアを購入した。 最後に、研究の現段階での成果を次のようなかたちで発表した。まず、2012年1月17日に南山大学ヨーロッパ研究センター定例研究会において研究発表「グラン=ギニョル劇と三面記事」を行った。さらに、本発表ならびにその際の議論に基づき論文「グラン=ギニョル劇と三面記事」を作成し、2012年3月刊行の『南山大学ヨーロッパ研究センター報』第18号に発表した。本論はグラン=ギニョル劇と同時代の治安意識の関係を、大衆ジャーナリズムの発達や三面記事による犯罪報道と関連づけて論じた研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究計画のうち、まずグラン=ギニョル劇ならびに同時代の諸科学に関する資料収集については、新刊・古書による図書の購入ならびにフランス国立図書館への複写依頼によってある程度まで達成できた。また、コンピュータならびに周辺機器、必要なソフトウェアについても、基本的なものを入手することができた。さらに、8月から9月にかけてフランスに国外出張を行い、フランス国立図書館などで資料収集を行った。またその際に、文学研究者や演劇関係者に会って情報収集を行うことができたことは研究を進めるうえで非常に有益であった。以上の研究成果に基づいて研究発表を行い、またその発表とその際の議論に基づいて研究論文を執筆することができた。以上から、当該年度の研究目的はおおむね達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続きグラン=ギニョル劇と同時代の科学との関連を研究してゆくが、次年度はとりわけグラン=ギニョル劇と植民地主義の関係に焦点を当ててみたいと考えている。このジャンルではアジアやアフリカが舞台となった作品が数多く存在するが、そこにはフランス人が同時代の帝国主義的政策において獲得した植民地に対して抱いていたイメージの反映が認められる。そこには一般に「オリエンタリズム」と呼ばれる諸問題を認めることができるだろう。また、これらの作品には風土病がしばしば恐るべき脅威として描かれるが、そこには同時代の細菌学や衛生学の発展の影響を見出すことができる。以上の研究を通じて、20世紀初頭の文学・政治・科学の間にある複雑な関係が浮かび上がるはずである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度もグラン=ギニョル劇ならびに同時代の科学に関する関連資料の収集を継続する。今年度の研究過程において新たに必要性の判明した関連資料が浮上してきたので、それらを入手する。新刊書・古書により関連資料を購入するほか、フランス国立図書館への複写依頼をおこなう。また、すでに入手した視覚資料のデータ化などを進める予定である。なお、今年度内に使用できなかった研究費については、次年度における資料購入に充てる予定である。 フランスへ2週間ほどの国外出張を行い、フランス国立図書館などにおいて図書・新聞・雑誌等の資料調査を行う。その際に、フランスの文学研究者や演劇関係者に会って情報収集や意見交換を行う。また、数度の国内出張を行い、大学図書館などで資料調査を行う。 コンピュータを用いて資料の分類整理ならびに論文の執筆を行う。以上の調査にもとづいた研究の途中成果を関係誌に発表する。
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