本研究の目的は、20世紀初頭のフランスで誕生した恐怖演劇であるグラン=ギニョル劇に対する同時代の諸科学、とりわけ精神医学の影響を解明することで、文学と社会の相互的影響関係を明らかにすることにある。 研究の3年目に当たる今年度は、8月6日から8月27日にかけてフランスへ研究出張を行い、フランソワ・ミッテラン国立図書館、リシュリュー国立図書館などで資料調査を行った。並行して自然史博物館、医学史博物館、警察博物館の見学を行うとともに、フランスの文学研究者、演劇関係者との協議を行った。帰国後、研究の成果を以下のように発表した。まず、2013年12月7日に東京大学で行われたシンポジウム「科学知の詩学 19~20世紀のフランス・ドイツにおける科学と文学・芸術」において研究発表「グラン=ギニョル劇と心霊科学の諸問題」を、2014年3月27日に南山大学地域研究センター共同研究「19~20世紀のヨーロッパにおける科学と文学の関係」第6回シンポジウムにおいて研究発表「グラン=ギニョル劇における異境のイメージ」を行った。さらに、2013年3月刊行の『南山大学ヨーロッパ研究センター報』第20号に論文「グラン=ギニョル劇における異境のイメージ―ロルド、モレル『究極の拷問』における中国像―」を発表した。 3年間の研究を通じて、グラン=ギニョル劇と同時代の諸科学――医学、心理学、犯罪科学、細菌学、心霊科学など――との関係について研究を行い、その成果を論文として発表した。とはいえこのジャンルに関連する科学の領域はきわめて多岐にわたるので、人類学、民族学、衛生学などの領域については今後の研究課題としたい。
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