研究課題
最終年度を迎え、本研究会と他分野研究会との交流を積極的に行った。怪異怪談研究会、社会文化研究会、日本近代文学会、日本催眠心理学会、日本比較文学会東海支部等において、本研究会メンバーが積極的にパネラーや研究報告を務め、異常心理をめぐる言説を考察する上でのより広い視野を共有し得た。こうした研究会相互の交流によって、本研究会メンバーからは異常心理言説研究に関する論文、単行本、資料復刻および刊行という成果が続々と発表された。たとえば、小松史生子は1920年代に西日本において展開された探偵小説文壇の動向を示す貴重な雑誌「猟奇」の復刊を三元社と協力して行い、猟奇という言葉で表現された大正期の異常心理言説と探偵小説ナラティヴとの関連を具体的な資料で検討する機会を得た。さらに、「人獣」というモチーフが頻繁に登場する物語群に注目し、そこに骨相学や精神医学の通俗的普及の状況を絡め、怪異怪談研究会および日本比較文学会東海支部にてパネラー発表を行った。また、研究協力者である竹内瑞穂は、博士学位申請論文を本研究会での研鑽を基に執筆し、『「変態」という文化』(ひつじ書房)を刊行した。これは、着実な文献探索とともに1920年代の文化を照射しなおす意義を持った、意欲的な著作となった。小泉晋一、安斎順子による、『元良勇二郎著作集』(クレス出版)の刊行開始も大きな成果である。元良勇二郎は雑誌「変態心理」周辺の重要人物であり、本研究会が追いかけていた人物でもある。元良の著作集刊行に本研究会の研究分担者および研究協力者が携わることになったのも、得難い実績といえるだろう。その他、本研究会メンバーが総動員して項目を担当した、『東海の異人・奇人列伝』(風媒社)は、東海圏と文化人に時として見られる奇矯な性格、とびぬけた発想力などを紹介し、名古屋を中心としたメンバーの研究成果が地元の文化の見直しに繋がることになった。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (20件)
都留文科大学国文学論考
巻: 50 ページ: 39-52
文藝論叢
巻: 82 ページ: 81-98
日本女子大学紀要文学部
巻: 63 ページ: 27-55
比較文學研究
巻: 98 ページ: 17-34