研究課題
前年度に着手し、やや進捗が遅れていたグイ語パタン~コン語諸方言パタンの変異の連続帯の解明を進めるために、コン語諸方言の資料の追加的分析を進めた。そのためにマックスプランク進化論人類学研究所言語学部門を訪問し、クリストフリート・ナウマン氏およびトム・グルデマン氏らトゥー語族の専門家との詳細な討議を行った。その結果、現時点で研究代表者がたてているコイサン拡張韻にかかわる一般化(約20の暫定的仮説)について、批判的かつ建設的なコメントを受け、その改訂を行った。これと平行して、コエ語族ナロ語を対象とした調査をコン語と同様の方法で進める試みをした。ただし、協力を期待していたボツワナ共和国在住のナロ語専門家ヘセル・フィセル氏との討議が氏の健康上の理由で期待通りには実現できず、文献資料にもとづく分析を行った。ラオ語の専門家である柳村裕氏の協力を得て、東南アジア声調言語の事例としてラオ語の1音節語を対象とした拡張韻的分析に着手した。また氏には、アフリカの声調言語の現象も詳細な観察を要請し、そこに拡張韻という分析装置がどこまで適用可能かについて分析を試みてもらった。今年度の具体的な研究実績としては、研究代表者による3つの論文と2つの国際学会発表、研究協力者の柳村氏による1つの論文が生み出された。
2: おおむね順調に進展している
やや遅れぎみだったグイ語パタン~コン語諸方言パタンの変異の連続帯の解明が、ベルリン大学およびマックスプランク人類進化論研究所のコン語研究者(トム・グルデマンおよびクリストフリート・ナウマン)との詳細な情報交換と討議によって格段の前進をした。ただしナロ語の分析は、海外協力者のヘセル・フィセルの健康上の都合により、主として文献資料によるものだけが先行した。とはいえ、次年度の半ばまでには当初の目的を実現できる見込みである。
最終年度となる2013年度は、これまでの分析と考察の総括と同時に、現時点までの成果発表して、挑戦的萌芽研究に相応しい、新しい視点の提案を積極的に行う。また、コイサン言語学における先端的研究を進めている研究者たちにひろく現時点での成果を知らせ、拡張韻に関する斬新な視点をもちいたコイサン比較音韻論という領域の新しい研究動向を生み出すための研究ネットワークをつくる。(すでにこの拡張韻をふまえたコイサン比較音韻論研究へは、ドイツ、デンマーク、ボツワナから10人の参加の同意を得ている。)
ナロ語専門家ヘセル・フィセル氏との討議のためのボツワナ滞在が氏の健康上の理由で実現しなかったため、次年度に研究費が生じたが、これを用いて、氏の健康状態の良好なときにボツワナを訪問する。依然として氏の都合がつかない場合は、ボツワナ大学のナロ関係者に協力を要請する。すでに2013年7月からのボツワナでの研究許可証は取得済みであり、ボツワナ大学アフリカ言語学科との研究交流は実績がある。東南アジアの声調言語の分析は、すでに進めている柳村裕氏との共同作業を継続する。その際に学生研究補佐の謝金が生じる。また、国内学会での発表、海外での国際学会での発表やセミナーのために出張旅費を使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
The Khoesan Languages (edited by Rainer Vossen), Routledge
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スワヒリ&アフリカ研究
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