2012年12月14日から15日まで青山学院大学において今回のプロジェクトの研究を総括する国際研究集会を「第一回アジア地理言語学国際会議」の名において開催した。 この会議ではタイ・中国・台湾からも研究者を招聘し,国内の研究者も含め計25件の発表と討論がすべて英語で行われ,論文集としてPapers from the First International Conference on Asian Geolinguisticsを多色刷りで刊行した。内容的には,総論としてアジア全域の地理言語学的研究の概要と展望を行い,タイ・カダイ語,ベトナム語,チベット語,アイヌ語,ニヴフ語,日本語,朝鮮語,モンゴル諸語,中国語,ミャオヤオ語などをカバーする地理言語学的研究からなるものである。 その多くの言語についてはこれまで地理言語学的研究が適用されたことがないか,あるいは先駆的な研究があるものであることが多い。またこれまでの蓄積がある言語に関しても各言語群の範囲内での検討にとどまっていたが,このたびアジア全域というパースペクティブで一望に見渡すことの端緒を作ったものとして意義深い。 更に,前年度に大阪大学の清水政明教授らと本国の研究者とのコラボレーションにより行われたベトナム語諸方言の現地調査の整理も進み,全項目に関する地図化と英文による解釈もほぼ完成している。 こうした成果をホームページで公開するための準備を行い,2013年度にはそれが実現する運びとなっている。また今回のプロジェクトを契機として形成されたネットワークにより2013年6月からは国内で引き続き毎年一回の予定で研究集会を行い,2014年8月にはタイで第二回の国際研究集会を開催し,以後は二年おきにアジア諸国で開く予定であり,アジア全域を一つの言語地域として言語地図を描き解釈を与えるという新領域を立ち上げ,軌道に乗せることができた。
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