本研究は英国における日本人の長期滞在者を日系ディアスポラと名づけ調査を行った。当初のアンケート調査をインタビュー調査に切り替えて対象に深く切り込み、新移民の社会言語学的研究として大きな成果が得られた。2013度は3回の現地調査を行い、成果は論文としてまとめ(注1)、口頭発表(注2)、国際日本学会のパネル発表(注3)に発展した。2013年2-3月に永住し老年期を迎えている国際結婚女性10名に各2時間前後のインタビューを行った。高度成長期を境に増加した日本人女性の海外移住とその日本語・日本文化維持、子への継承、自己の位置づけとアイデンティティに関して興味深い成果が得られた。同年9月、子育て世代の国際結婚女性10名に同様のインタビューを行い、日本の位置づけやグローバル化、メディアの発達などが上記の問題系に与えた影響について考察を深めた。2014年2-3月には長期滞在の日本人カップルに対して同様の調査を行い、自己の立場や位置づけが異なる人々の間で上記の問題系の把握と結果としての相違を考察した。本科研から得られた新たな研究の方向性として、海外に居住する日本人の言語の保持と継承の意識と努力がどのような社会的・心理的条件に左右されるかを中心に共同研究者と研究を深化していきたい。 注1 三宅和子(2014)「在英日系ディアスポラの言語生活」『文学論藻』88号,pp.45-63注2 三宅和子(2014)「在英日系ディアスポラのことばとアイデンティティ」第9回 ひと・ことばフォーラム(3月24日)東洋大学 注3 三宅・川上・岩崎(2014) 「複言語使用者は日本語・日本をどのようにとらえ、どのように向き合っているのか」14th International Conference of European Association for Japanese Studies,リュブリャーナ
|