研究概要 |
本年度は以下のような学会発表をし、評価を受けた。[1}神田和幸・大杉豊, 1901年から2011年に至る日本手話の歴史的変化のデータベース, 手話の歴史言語学,第20回国際歴史言語学会(ICHL2011),大阪,(2011.7.28)[2]神田和幸・木村勉,手話研究の方向変換への提言,電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学111(174),pp.31-36, (2012.8.4)これらの発表の前提として、関西地区、鹿児島、新潟の聴覚障害者に面接調査し、また鹿児島の古手話の文献を調査し、多くの人々の協力をえて、その復刻に努めたが、その成果は好評を得た。この鹿児島の古手話の発見は文献調査の副産物で偶然的なものだが、結果として、古い日本の手話の形の変化過程がわかり、新しく創造しようとする補聴サインの構造を考える上で非常に参考となった。古手話にはジェスチャーを起源とすることが明白な手話が多く含まれ、それが標準化されていく過程で、省略化、中心化していくことが明らかになった。つまりは補聴サインは、このプリミティブな形態が聴覚障害者にとって理解しやすいのであり、複雑な情報伝達が必要になってきた現代社会とは反対に、高齢者のような日常のコミュニケーションが必要な人々で、しかも新たなに高度な手話が学習しにくい人々にとって、何が「やさしい手話」なのかを考える上で大いにヒントとなったといえる。
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