研究課題/領域番号 |
23652093
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
沈 力 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (90288605)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 比較言語学 / GIS / 混合方言 / 堆積岩 / 古四声 |
研究概要 |
本研究では、山西省南部で話されている中原官話と山西省中部で話されている晋語の接触地域にみられる「混合方言」の生態を解明するものである。本研究は、当該地域の地理情報と言語情報を村単位で調査・記述したうえで、比較言語学的な手法と地理情報システム(GIS)という情報科学の技術を組み合わせ、当該地域の方言が持つ混合性を解明することを目的とする。23年度には、混合方言が独自の特徴と二つの強勢方言の特徴を併せ持つ原因を明らかにするため、汾河方言区と並州方言区の間に対立が見られ、Karlgren(1915)、王力(2008)によって祖形が再構成されている5つの調査項目を設定し、山西省地方政府の支持を取りつけながら、方言接触地域において方言調査を行った(旅費・謝礼執行)。そのなかで、5つの調査項目から、方言伝播によって作られている霊石高地の堆積岩式特徴が明らかにされた。この研究の成果は、「用GIS手段解読混合方言的成因――以霊石高地為例 (GISによる混合方言の成立要因へのアプローチ―霊石高地を中心に)」(『言語教学与研究』)で公開されている。さらに、声調について、中古音韻は「古四声×2(陰陽対立)」の8声調体制であったが、並州方言区は陰陽対立の衰退、汾河方言区は古四声の衰退が進んでいることが明らかにされている。この研究成果は、「山西回廊における入声変化の解明―地理情報科学の方法を利用して―」(藤代節編『ユーラシア諸言語の動態(II)-多重言語使用域の言語―』)で公開されている。 一方、音韻分析だけではなく、文法分析や調査を行った。文法調査の成果は「山西話的"持続"与"進行"」(日本中国語学会第61回全国大会シンポジウム:「漢語北方話的進行持続体」)で公表されている。その他に、方言解明と関連する理論的研究も多く発表されている。(下記業績参照)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由1、本研究はもともと三年間をかけて二大強勢方言(晋語の並州方言区と中原官話の汾河方言区)の間に挟まれた霍州市、汾西県、霊石県のすべての村々(合計643村)の方言を調査する予定でしたが、1年間で624地点完成した。理由2、中古音韻の再建祖形を根拠に、当該地域の混合方言が、声調の面では中古音韻の8声調体制(実際7声調)を維持していながら、音素配列の面では2つの強勢方言から強い影響を受けている原因を解明することを目標としていたが、この一年で分析の成果を出して公開している。
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今後の研究の推進方策 |
霊石高地の三県におけるすべての村におけるデータを完全取得すると同時に、領域拡大して三県周辺地域を調査し、言語伝播の特徴をより正確に捉えることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究代表者は残りの20地点を現地調査する。(旅費・謝礼30万執行)さらに、3県周辺(約600地点)の方言調査を山西大学の研究者に委託し、現地調査の費用および謝礼(70万)を執行する予定である。
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