研究課題/領域番号 |
23652093
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
沈 力 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (90288605)
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キーワード | 国際研究者交流 / 中国山西大学 / 中国社会科学院 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の計画調書には「二年目には,地理データ及び人口・戸数データの収集を行うとともに,方言調査も継続して行う.一年目と同様に、混合方言調査班は霍州市、汾西県、霊石県の計643 の村を対象として調査を行い,強勢方言調査班は並州方言区と汾河方言区を対象として調査を行う.総括的研究担当者(沈)は、NASA のホームページからダウンロードした地形データと現地で収集した地理・人口データを3DEM やIDRISI 等のソフトウェアで処理し,混合方言地域の地形図を作成する.」と書いてある. 24年度の研究成果を先に言えば,当初計画通りになっているといえる.1.混合方言調査班は霍州市、汾西県、霊石県の計643 の村を対象として調査を行い、電子データとして整理している.2.科研代表者はGISを利用して,山西省中部の地形と人口データを入手し,分析した結果,人口密度と徒歩コストは方言伝播の重要な要素であることをあきらかにした.3.強勢方言調査班は並州方言区と汾河方言区を対象として調査を行い,さらに,十数か所の方言データを電子化している. それらの研究成果は「GISを用いた言語伝播の推定―交流度計算方法の再検討―」『文化情報学』(2013,3)と"A Gradual Path to the Loss of Entering tone Syllables: Case studies of Jin dialects in the Lingshi Highlands, Shanxi" The First International Conference on Asian Geolinguistics. In Aoyama Gakuin University, Li Shen and Naomi Nakano.(2012,12)として公表されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査面 山西大学言語科学研究所の教員と大学院生たちの強力な支持を得て,当初の計画以上に言語データを入手することができた.すなわち「人海戦術」が功を奏したといえるかもしれない. 理論面 中国社会科学院侯精一教授と協議し,GISに基づく言語伝播の地図を作成することに合意した.さらに,漢語の入声の消失が音節の長短によって左右されることを明らかにしたことは,当初の計画では予想しなかったことである.この成果は伝統的漢語研究の手法と科学としての言語学の手法との結び付きによってもたらされたものであると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定 1.2013年7月に,国際会議を開き,本科研の成果を内外に公表する予定である.この会議で中国人方言学者と日本人方言学者の交流を促進する一方,方言研究の展望について議論を展開する予定である. 2.言語伝播の事実を反映するような,従来と異なるタイプの方言地図を作成する予定である.この地図は生き物としての言葉の性質を反映するものになるだろうと考えられる. 3.方言伝播をとらえるために,地理情報システムと歴史言語学との結びつきの方法をいかに開発していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.7月に国際会議を行う予定なので,謝礼・旅費執行(300千円). 名称:『中日理論言語学国際フォーラム2013』場所:同志社大学今出川キャンパス,寧静館5 階会議室 午前の部:シンポジウム「地理方言学研究の展望」(司会:沈力)喬全生(山西大学),馮良珍(山西大学)大西拓一郎(国立国語研究所),岩田礼(金沢大学) 午後の部:研究発表1「方言文法の行方」(司会:星英仁)佐々木冠(札幌学院大学),井上優(麗澤大学)遠藤雅裕(中央大学) 研究発表2「資源としての方言」(司会:李長波)定延利之(神戸大学)・河崎みゆき(華中科技大学)沈力(同志社大学) 2.いままで不十分であった方言データを補足収集する.謝礼執行(200千円)
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